ハワイのアオフ島出身の弁護士マット(ジョージ・クルーニー)は、一族が祖先から受け継いだ広大な土地を信託されている。土地の信託期限が迫り、売却するか保有するか、親族間で話し合いを続けていた。そんな中、妻がボート事故で昏睡状態になり回復の見込みはないと先刻される。2人の娘を抱えて途方にくれるマットだが、追い討ちをかけるように妻が浮気をしていたことが発覚する。監督はアレクサンダー・ペイン。
予告編だと最近多い「ダメ男」系の主人公のような印象だったが、マットは決してダメ男ではない。むしろちゃんとした人だ。不動産資産には手を付けずに(土地の売却・賃貸のみで生活している親族もいる)弁護士としてまっとうに働き、親族をまとめて土地の扱いを話し合おうという姿勢からも垣間見られるように、基本真面目なのだ。しかし、そんな「ちゃんとした人」にも青天の霹靂のごとく困難が降りかかる。そして「ちゃんとした人」でもうろたえ、じたばたするのだ。じたばたする過程で、その人の地が見えてくる。
マットを演じたジョージ・クルーニーはインタビューの中で「(マットは)優しい男だ、ただ認識が甘い」と評している。これがそのものずばりで、クルーニーの理解度の高さはさすがだと思った。マットは、自分は仕事人としても夫としても父親としてもよくやっており、家族は上手くいっていると思っている。確かにそこそこよくやってはいるのだが、娘達と親密とは言いがたいし、妻が家庭に不満を持っていることにも気付かなかった。彼が苦々しさや悲しみを感じつつ、妻が、娘たちがどういう人物であるかをもう一度発見していく過程の物語でもあった。
この人は実はどういう人なのか、この人にはこんなところもあったのか、という発見は、他人同士よりも家族の間でなされた時の方が驚きが大きいように思う。家族である、という時点で役割によるフィルターがかかってしまっているし、そんなに深く観察しようという気にもならないのかもしれない。ニックの舅(妻の父)が、「娘はいい子だ」と言い家庭を顧みなかったとニックを責めるが、後々出てくる若い頃の話からは、ニックの妻が「いい子」だったとは考えにくい。むしろ大胆な女性で、彼女にとってニックは生真面目すぎて段々退屈になってきたんじゃないかという事情が察せられる。でも、それでも父親にとっては「いい子」で彼女の他の面を想像したりはしないんだなぁと。ニックも、妻は「よき母・よき妻」としてしか見てこなかったわけだが。
マットも娘たちも、急に降りかかった災難によって家族と向き合い直すことになる。妻の浮気相手を調べる過程で、マットと長女が妙な協力関係になっていくのがおかしかった。彼らの「調査」は目の前の問題から逃避しているようにも見えるし、ニックに関しては大分子供っぽいとも言える。しかし、浮気相手に対してニックが取った態度はちゃんとした大人のものだ。それは長女にとっては、初めて見る父親の姿だったかもしれない。
地味ながらきめ細かい良作。人生では往々にして悲しみとおかしみが一緒にやってくる、という部分の捉え方・見せ方がすごくいいなと思った。意外とハワイ観光ぽさはない。ハワイに住んでいる人が主人公だからか。
予告編だと最近多い「ダメ男」系の主人公のような印象だったが、マットは決してダメ男ではない。むしろちゃんとした人だ。不動産資産には手を付けずに(土地の売却・賃貸のみで生活している親族もいる)弁護士としてまっとうに働き、親族をまとめて土地の扱いを話し合おうという姿勢からも垣間見られるように、基本真面目なのだ。しかし、そんな「ちゃんとした人」にも青天の霹靂のごとく困難が降りかかる。そして「ちゃんとした人」でもうろたえ、じたばたするのだ。じたばたする過程で、その人の地が見えてくる。
マットを演じたジョージ・クルーニーはインタビューの中で「(マットは)優しい男だ、ただ認識が甘い」と評している。これがそのものずばりで、クルーニーの理解度の高さはさすがだと思った。マットは、自分は仕事人としても夫としても父親としてもよくやっており、家族は上手くいっていると思っている。確かにそこそこよくやってはいるのだが、娘達と親密とは言いがたいし、妻が家庭に不満を持っていることにも気付かなかった。彼が苦々しさや悲しみを感じつつ、妻が、娘たちがどういう人物であるかをもう一度発見していく過程の物語でもあった。
この人は実はどういう人なのか、この人にはこんなところもあったのか、という発見は、他人同士よりも家族の間でなされた時の方が驚きが大きいように思う。家族である、という時点で役割によるフィルターがかかってしまっているし、そんなに深く観察しようという気にもならないのかもしれない。ニックの舅(妻の父)が、「娘はいい子だ」と言い家庭を顧みなかったとニックを責めるが、後々出てくる若い頃の話からは、ニックの妻が「いい子」だったとは考えにくい。むしろ大胆な女性で、彼女にとってニックは生真面目すぎて段々退屈になってきたんじゃないかという事情が察せられる。でも、それでも父親にとっては「いい子」で彼女の他の面を想像したりはしないんだなぁと。ニックも、妻は「よき母・よき妻」としてしか見てこなかったわけだが。
マットも娘たちも、急に降りかかった災難によって家族と向き合い直すことになる。妻の浮気相手を調べる過程で、マットと長女が妙な協力関係になっていくのがおかしかった。彼らの「調査」は目の前の問題から逃避しているようにも見えるし、ニックに関しては大分子供っぽいとも言える。しかし、浮気相手に対してニックが取った態度はちゃんとした大人のものだ。それは長女にとっては、初めて見る父親の姿だったかもしれない。
地味ながらきめ細かい良作。人生では往々にして悲しみとおかしみが一緒にやってくる、という部分の捉え方・見せ方がすごくいいなと思った。意外とハワイ観光ぽさはない。ハワイに住んでいる人が主人公だからか。