1930年台のパリ。ギリシア人の妻アルシノエ(カテリーナ・ディダスカル)と共にロシアから亡命してきた元ロシア帝政軍将校フョードル(セルジュ・レンコ)は、在仏ロシア軍人協会の事務員として働いていた。アルシノエはアパートの上階に住む教師のパサール夫妻と親しくなり食事に誘うが、急進的な共産党員の夫妻とフョードルとは会話がかみ合わない。やがてスペイン内戦が勃発し、フョードルは出張で留守がちに。彼の仕事に疑問を持ったアルシノエが問い詰めると、フョードルは自分は諜報員だと告白する。監督はエリック・ロメール。
ボルシェヴィキ政権に追放されたロシア亡命者をフランスが数多く受け入れていた、しかしパリでは左翼政権が力をつけてきているという時代を背景に、実際にあったスパイ事件を基にしているそうだ。ロメール作品としてはちょっと毛色が変わっている。ロメール版戦争映画(正確には戦争に至るまでだが)とも言えそうだ。フョードルは元軍人で亡命してきているくらいだから、共産主義には冷笑的なはずなのだが、言動を見ていると彼自身には確固とした主義主張はあまりないのではないかと思えてくる。彼の言動はどこか嘘っぽく、その場その場に合わせた、とって付けたもののようだ。こんな胡散臭い人(演じるレンコの風貌がまた胡散臭い)、そうそう信用されないだろうと思うのだが、なぜか周囲からの人望はあるらしい。フョードルという人物がいる部分が空洞になっているような、妙な実態のなさを感じた。
対して、妻であるアルシノエは生き生きとして実体感のある、「どういう人なのか」がくっきり浮かび上がってくる造形だ。政治にはうといが絵画製作に励んでいて(微妙なヘタウマさがかわいい)、チャーミング。夫婦のキャラクターが対称的なところはコメディぽい。対称的だが、意外に相思相愛らしいところも面白かった。最初は奥さんの愛の方が大目なのかしらと思っていたら、夫も意外と・・・。しかし奥さんが魅力的なだけに結末は苦い。
当時の、ロシア亡命者や共産党、ソ連軍部、そしてナチスなど、各方面の思惑が垣間見られる。当時の報道映像も要所要所で使われており、この時代の雰囲気を味わえるのではないかと思う。当時のファッションなど、美術面も楽しい。
ボルシェヴィキ政権に追放されたロシア亡命者をフランスが数多く受け入れていた、しかしパリでは左翼政権が力をつけてきているという時代を背景に、実際にあったスパイ事件を基にしているそうだ。ロメール作品としてはちょっと毛色が変わっている。ロメール版戦争映画(正確には戦争に至るまでだが)とも言えそうだ。フョードルは元軍人で亡命してきているくらいだから、共産主義には冷笑的なはずなのだが、言動を見ていると彼自身には確固とした主義主張はあまりないのではないかと思えてくる。彼の言動はどこか嘘っぽく、その場その場に合わせた、とって付けたもののようだ。こんな胡散臭い人(演じるレンコの風貌がまた胡散臭い)、そうそう信用されないだろうと思うのだが、なぜか周囲からの人望はあるらしい。フョードルという人物がいる部分が空洞になっているような、妙な実態のなさを感じた。
対して、妻であるアルシノエは生き生きとして実体感のある、「どういう人なのか」がくっきり浮かび上がってくる造形だ。政治にはうといが絵画製作に励んでいて(微妙なヘタウマさがかわいい)、チャーミング。夫婦のキャラクターが対称的なところはコメディぽい。対称的だが、意外に相思相愛らしいところも面白かった。最初は奥さんの愛の方が大目なのかしらと思っていたら、夫も意外と・・・。しかし奥さんが魅力的なだけに結末は苦い。
当時の、ロシア亡命者や共産党、ソ連軍部、そしてナチスなど、各方面の思惑が垣間見られる。当時の報道映像も要所要所で使われており、この時代の雰囲気を味わえるのではないかと思う。当時のファッションなど、美術面も楽しい。