両親が別居し、兄・航一(前田航基)は母親と一緒に鹿児島で、弟・龍之介(前田旺志郎)は父親と一緒に福岡で暮らすことになった。航一はまた大阪で家族4人で暮らしたいと願っている。ある日、新たに開通する九州新幹線の「つばめ」と「さくら」の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起きるという噂を聞き、奇跡を起こすべく友人達と計画を立てる。監督は是枝裕和。
『だれも知らない』以来、子供を撮るのが上手い監督というイメージだが、本作でもやっぱり上手いなと思った。私は子供があまり好きではないので、子供の素に近い状態で撮っていると思われる部分(将来なりたいものを話すところとか)は、見ていてムズ痒くなってしまうのだが、ちゃんとセリフを言わせている部分は、子供の素と演技の兼ね合いがすごくうまくいっているんじゃないかと思う。特に主役の前田兄弟は演技が達者でびっくりした。演技が達者というより、役柄をよく理解していると言った方がいいのかもしれない(セリフ回し自体はおぼつかないところもあるので)。漫才師である彼らは元々人前に立つことには慣れているのだろうが、「こういう子」というキャラクターがちゃんと立ち上がってきている。他の子供達も、それぞれ個性・立ち居地がはっきりとしている。龍之介の友人でみそっかす的な男の子は、セリフはそう多くないのに妙にひっかかってくるものがあった。
兄弟の、一見した雰囲気とは裏腹なキャラクターの差異の付け方が上手い。兄・航一はしっかり者でおおらかそうなルックスだが、実は神経質。冒頭、この子はなんで朝からぞうきんがけしているのかなーきれい好きで偉いわーと思っていたのだが、これは火山灰を気にしているんだなとわかってくる。家族4人で暮らすことにも、航一の方が拘っている。対して弟・龍之介は、適応能力が高く社交的で、あっけらかんとしている。しかし、彼は家族が元に戻れるかということには懐疑的。彼のほうがリアリストで、両親の仲は修復できないと悟っている。庭の野菜の出来を気にするくだりはほほえましくもあるのだが、せめて今を楽しく、という彼の処世術が垣間見えて切なくもある。航一の神経質さが、新しい環境への不安からきているものらしいことも、毎日それなりに楽しげに過ごす龍之介との対比で浮かび上がってくる。
本作に真の主人公がいるとすれば、龍之介ではなく航一だろう。彼が「今」と折り合いをつけるまでの物語なのだ。龍之介は、早々に折り合いをつけてしまっているので、若干背景寄りに見える。
子供達が現状に対してもやもや、あれこれしている姿が描かれるが、大人達も形は違えどもやもや、あれこれしている。航一兄弟の両親はもちろん、祖父やその商店街仲間たちも、「今」と向き合うことに悩んでいるのだ。そのへんはごくさりげなく触れ、あくまで子供主体の映画になっている。夏休みに見たい作品だった。
『だれも知らない』以来、子供を撮るのが上手い監督というイメージだが、本作でもやっぱり上手いなと思った。私は子供があまり好きではないので、子供の素に近い状態で撮っていると思われる部分(将来なりたいものを話すところとか)は、見ていてムズ痒くなってしまうのだが、ちゃんとセリフを言わせている部分は、子供の素と演技の兼ね合いがすごくうまくいっているんじゃないかと思う。特に主役の前田兄弟は演技が達者でびっくりした。演技が達者というより、役柄をよく理解していると言った方がいいのかもしれない(セリフ回し自体はおぼつかないところもあるので)。漫才師である彼らは元々人前に立つことには慣れているのだろうが、「こういう子」というキャラクターがちゃんと立ち上がってきている。他の子供達も、それぞれ個性・立ち居地がはっきりとしている。龍之介の友人でみそっかす的な男の子は、セリフはそう多くないのに妙にひっかかってくるものがあった。
兄弟の、一見した雰囲気とは裏腹なキャラクターの差異の付け方が上手い。兄・航一はしっかり者でおおらかそうなルックスだが、実は神経質。冒頭、この子はなんで朝からぞうきんがけしているのかなーきれい好きで偉いわーと思っていたのだが、これは火山灰を気にしているんだなとわかってくる。家族4人で暮らすことにも、航一の方が拘っている。対して弟・龍之介は、適応能力が高く社交的で、あっけらかんとしている。しかし、彼は家族が元に戻れるかということには懐疑的。彼のほうがリアリストで、両親の仲は修復できないと悟っている。庭の野菜の出来を気にするくだりはほほえましくもあるのだが、せめて今を楽しく、という彼の処世術が垣間見えて切なくもある。航一の神経質さが、新しい環境への不安からきているものらしいことも、毎日それなりに楽しげに過ごす龍之介との対比で浮かび上がってくる。
本作に真の主人公がいるとすれば、龍之介ではなく航一だろう。彼が「今」と折り合いをつけるまでの物語なのだ。龍之介は、早々に折り合いをつけてしまっているので、若干背景寄りに見える。
子供達が現状に対してもやもや、あれこれしている姿が描かれるが、大人達も形は違えどもやもや、あれこれしている。航一兄弟の両親はもちろん、祖父やその商店街仲間たちも、「今」と向き合うことに悩んでいるのだ。そのへんはごくさりげなく触れ、あくまで子供主体の映画になっている。夏休みに見たい作品だった。