夢を見ている間に潜在意識の奥の情報を盗む高度な技術“エクストラクト”を得意とする産業スパイのコブ(レオナルド・ディカプリオ)。しかし仕事がバレて母国には帰れず、子供たちにも会えずにいた。そんな彼に企業家サイトー(渡辺謙)が、エクストラクトとは逆にアイディアを潜在意識に植え付ける“インセプション”を依頼してくる。インセプションはエクストラクトより難しくほぼ不可能、しかし成功すればコブが母国に帰れるよう取り計らうというのだ。コブは世界中から凄腕のメンバーを選び、ミッションに挑むが。監督・脚本はクリストファー・ノーラン。
いやー面白かったー(しみじみと)。予告編でも使われていたような、「町が折りたたまれる」というようなビジュアルの楽しさはもちろんだが、『オーシャンズ11』的なわりと軽いノリのチームものとしてユカイだった。リーダーであるコブを筆頭に、設計士や調合士など、職業名とそれぞれのキャラクターが出揃っていく過程はわくわくする。キャラクターも、どの人もそれなりの可愛げがある。特にコブの片腕であるアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)の、一見優男だが飄々と荒事をこなす姿が実にチャーミング。「想像力がない」と言われるところが、想像にひきずられそうになるコブと対照的。キャスティングは概ね成功だと思う。個人的には、インセプションのターゲットであるロバートをキリアン・マーフィーが演じているのがうれしい。そして日本人キャストとして話題になった渡辺謙が予想以上に活躍している。サイトー、いい人だ(笑)!ノーラン監督は相変わらず男を魅力的に撮る。ヒロイン役のエレン・ペイジとマリオン・コティヤールは、まあそれなりに・・・。でも基本女性を撮ることにはあんまり執着がないみたいだ。
夢の第一層、第二層というように、コブたちはだんだん夢の深層(ターゲット自身が見る夢ではなくターゲットの夢として設計された夢というところが面白い)へと移動していくが、夢の構造やルールがわかりやすく、よく整理されていたと思う。現実と各階層の夢とが連動していて、現実、またある層での出来事が他の層での出来事に影響を与えているという関係の見せ方が上手い。モルや電車の出現も、夢のコントロールできなさをよく表していていた。私が頻繁に悪夢を見るタイプだからかもしれないが、怖い夢は、夢だと気づいていてもその怖さを押し留めることができない。「こうなったら嫌だな」と思うと、どんどんその方向に流れていくという特徴があると思う。なので、モルの出てきかたはわりと本気で怖かった。
コブにしろロバートにしろ、夢の深いところに抱えた問題は、死者との関係に関わるものだ。彼らは夢の中で相手(死者)と相対するが、相手はあくまで自分の夢の登場人物、自分が作り上げた「その人」であり、しかも死者。当人の真意を聞くことはもはや出来ない。出来るのは、自分が相手に対してどう思っていたのか、どうしたかったのかと向き合うことだけだ。金庫室でロバートがした選択は、「自分は本当はどうしたかったのか、相手にどう思われたかったのか」と考えた結果だ。それは彼の気持ちの中での問題でしかなく、現実に何かが変わるわけではない。だからこそ痛切なのだが、彼の人生にとっては大きな意味を持つ。ロバートにとってはインセプションはカウンセリングのようなものだった。
これが、インセプションを行う側であるコブにとっても同じような作用を持つというところがとても面白い。彼は妻・モル(マリオン・コティヤール)との関係に問題を抱えており、その問題はチームの安全を脅かすようにまでなる。それでもミッションを進めるコブの行動は身勝手でもあるが、それだけに切実さも感じる。一歩間違うと大変危険だが、やらなければ永遠に問題を解決できず苦しむというところは、深層心理との付き合いに似ている。他人の夢の中で自分のカウンセリングを行うという変な構造ではあるが。
さて、コブは妻の存在に深く捕らわれているのだが、もうひとつ、彼を捕らえているものがある。こちらは妻以上に手ごわい。おそらく切り捨てるのは無理だろう。そう思うとラストは怖い。
いやー面白かったー(しみじみと)。予告編でも使われていたような、「町が折りたたまれる」というようなビジュアルの楽しさはもちろんだが、『オーシャンズ11』的なわりと軽いノリのチームものとしてユカイだった。リーダーであるコブを筆頭に、設計士や調合士など、職業名とそれぞれのキャラクターが出揃っていく過程はわくわくする。キャラクターも、どの人もそれなりの可愛げがある。特にコブの片腕であるアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)の、一見優男だが飄々と荒事をこなす姿が実にチャーミング。「想像力がない」と言われるところが、想像にひきずられそうになるコブと対照的。キャスティングは概ね成功だと思う。個人的には、インセプションのターゲットであるロバートをキリアン・マーフィーが演じているのがうれしい。そして日本人キャストとして話題になった渡辺謙が予想以上に活躍している。サイトー、いい人だ(笑)!ノーラン監督は相変わらず男を魅力的に撮る。ヒロイン役のエレン・ペイジとマリオン・コティヤールは、まあそれなりに・・・。でも基本女性を撮ることにはあんまり執着がないみたいだ。
夢の第一層、第二層というように、コブたちはだんだん夢の深層(ターゲット自身が見る夢ではなくターゲットの夢として設計された夢というところが面白い)へと移動していくが、夢の構造やルールがわかりやすく、よく整理されていたと思う。現実と各階層の夢とが連動していて、現実、またある層での出来事が他の層での出来事に影響を与えているという関係の見せ方が上手い。モルや電車の出現も、夢のコントロールできなさをよく表していていた。私が頻繁に悪夢を見るタイプだからかもしれないが、怖い夢は、夢だと気づいていてもその怖さを押し留めることができない。「こうなったら嫌だな」と思うと、どんどんその方向に流れていくという特徴があると思う。なので、モルの出てきかたはわりと本気で怖かった。
コブにしろロバートにしろ、夢の深いところに抱えた問題は、死者との関係に関わるものだ。彼らは夢の中で相手(死者)と相対するが、相手はあくまで自分の夢の登場人物、自分が作り上げた「その人」であり、しかも死者。当人の真意を聞くことはもはや出来ない。出来るのは、自分が相手に対してどう思っていたのか、どうしたかったのかと向き合うことだけだ。金庫室でロバートがした選択は、「自分は本当はどうしたかったのか、相手にどう思われたかったのか」と考えた結果だ。それは彼の気持ちの中での問題でしかなく、現実に何かが変わるわけではない。だからこそ痛切なのだが、彼の人生にとっては大きな意味を持つ。ロバートにとってはインセプションはカウンセリングのようなものだった。
これが、インセプションを行う側であるコブにとっても同じような作用を持つというところがとても面白い。彼は妻・モル(マリオン・コティヤール)との関係に問題を抱えており、その問題はチームの安全を脅かすようにまでなる。それでもミッションを進めるコブの行動は身勝手でもあるが、それだけに切実さも感じる。一歩間違うと大変危険だが、やらなければ永遠に問題を解決できず苦しむというところは、深層心理との付き合いに似ている。他人の夢の中で自分のカウンセリングを行うという変な構造ではあるが。
さて、コブは妻の存在に深く捕らわれているのだが、もうひとつ、彼を捕らえているものがある。こちらは妻以上に手ごわい。おそらく切り捨てるのは無理だろう。そう思うとラストは怖い。