3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

2010年04月

『ウディ・アレンの夢と犯罪』

 投資家としての成功を夢見つつも、病気の父親に代わって家業のレストランのきりもりをせざるを得ないイアン(ユアン・マクレガー)と、酒とギャンブルに溺れがちだが自動車整備工としての生活にそれなりに満足しているテリー(コリン・ファレル)の兄弟。ある日イアンは女優のアンジェラに一目ぼれし、自分を裕福な実業家と偽ってしまう。一方テリーはポーカーで多額の借金を背負ってしまった。金策に困った2人は金持ちの実業家の伯父ハリーに相談する。ハリーはある取引を持ちかけてきた。
 ウディ・アレン監督の2007年の作品だが、日本での公開はなぜか2010年に。『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に続く、ロンドン三部作だそうだ。正直、物語としての意外性はびっくりするくらいない。『マッチポイント』のような心理サスペンスの面白さや、『タロットカード~』のようなある種の底抜け感があるわけでもないのだが、個人的には何となく好きな作品。まあアレン作品は大概(結構な駄作であっても)嫌いじゃないんですが・・・。物語の省略が潔いところが気に入っているのかなと思う。見せなくて事足りるところは見せない、スパスパと切っていく感じが気持ちいい。アレンの作品は、それが悲劇であれ喜劇であれ、人生に対する諦観が根っこにあるように思う。そこが好ましい。
 欲に目がくらんだ兄弟の転落劇は、特に目新しさはないものだ。ただ、俳優2人の力でそこそこ見せてくれる。ユアン・マクレガーはいつものことながら非常に無難。主演作品としては『フィリップ、君を愛してる!』の方が底力を感じさせたものの、安定感は抜群。対してコリン・ファレルは久々のハマり役だった。優しいけれど弱い男のかわいさと情けなさを好演していた。個人的にこういうタイプは好きではないのだが(笑)、ファレルがやると、いるいるこういう人~!という説得力があった。マクレガー演じる兄には、そこまでの実体感はない気がする。
 それにしても、船に付ける名前がよりによって「カッサンドラ号」とは縁起が悪すぎる!知らないっておそろしい・・・。




『バッド・ルーテナント』

 ハーヴェイ・カイテル主演『バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト』(1992年)をヴォルナー・ヘルツォーク監督がリメイクした作品。元作品はキリスト教が色濃く影響していたそうだが(未見です)、リメイクされた本作には宗教色は殆どない。ハリケーン「カトリーナ」襲来後のニューオリンズ。刑事テレンス・マクドノー(ニコラス・ケイジ)は水没した拘置所に置き去りにされた容疑者を助けたことで、表彰され昇進する。しかし数年後、腰痛を紛らわすうちに麻薬浸りになったマクドノーは、応酬された麻薬を保管庫から持ち出し、愛人の高級娼婦フランキー(エヴァ・メンデス)と楽しむ日々を送っていた。ある日、移民の一家が惨殺される事件が起き、マクドノーが担当することになる。容疑者は麻薬のディーラーらしいが。
 私はヘルツォーク監督の作品は、『神に選ばれし無敵の男』と短編の『失われた1万年』しか見たことがないのだが、アクが強くて、ハリウッドの娯楽作とは縁遠い作風だなとは思った。それがハリウッド映画、しかも近年はB級映画の顔になりつつあるニコラス・ケイジ主演というから、いったいどういう作品になるんだと思っていた。で、見てみたらこれが面白い!ヘルツォークが普通に娯楽作品を撮るなんて!妙な長閑さというか野太さが漂うが、これはニューオリンズの雰囲気によるところも大きいのか?ハリケーンからの復興後なので、そう長閑なはずはないのだろうが・・・。当然音楽もニューオリンズ色強くうれしい。
 マクドノーは筋金入りのジャンキーであり、しかもギャンブルで借金を抱え、落ちるところまで落ちてしまう。窮地から抜け出すために彼は悪党と手を組む。元々品行方正とは程遠い男だ。しかしそんな彼が、同僚に止められても容疑者を助けたり、被害者遺族の訴えに心を動かされたりする。彼の中には刑事の部分と悪党の部分とがあって、常にゆらいでいるように見える。といっても、その間で葛藤するのではなく、境界をあっさり越えて行ったり来たりする、案外軽やかなところが面白い。2つの世界の間を行き来する刑事ドラマというと、最近ではホアキン・フェニックス主演『アンダーカヴァー』が印象深かったが、思いつめて一つの世界を捨てていくホアキンとは、本作のケイジは対称的。
 ニコラス・ケイジが久しぶりにB級(好きなんだろうけどね)でない映画に主演しているというのもうれしい。見た目も演技もわりとこってりしているので役を選ぶ俳優だと思うが、本作にははまっているし、やはり(クドいけど)名優だと思う。麻薬でハイテンションになっている演技が板についている。「これから仕事だからコカインやろうと思ったのにヘロインしかないよ!(だったかな?)」というセリフには笑った。アッパー系きめないと仕事に向かえないのね。




『フィリップ、きみを愛してる!』

 天才詐欺師のスティーヴン(ジム・キャリー)は、収容された刑務所でフィリップ(ユアン・マクレガー)に出会い一目ぼれする。彼と暮らす為に脱獄し、金を稼ぐために詐欺を繰り返すが、とうとう再逮捕されてしまう。しかしスティーヴンはフィリップに会いたい一心で脱獄を繰り返す。監督・脚本はグレン・フィカーラとジョン・クレア。実話が元になっているそうだけど、世の中すごい人がいるもんですね~。冒頭で実話に基づくということを「ほんとだってば」と念押ししているのがおかしい。
 スティーヴンの詐欺行為は、もちろん金が欲しい、豊かな暮らしがしたいという欲望によるものではあるのだが、それより根深く、もっとすごい人になりたい、もっとよく見られたいという欲求がある。ありのままの自分というものはなく、「何者か」であらずにはいられない。しかし誰もが大層な「何者か」になれるわけでもないので、彼は「何者か」を装った人になるしかない。スティーヴンは強迫観念的に何者かでおらずにはいられなくなっており、彼の行為は全てこの強迫観念に追い詰められた為のものに見える。そこまでやる必要はないのに詐欺をせずにはいられないというような。スティーヴがフィリップに向ける愛も、それ故の脱獄も、ある意味強迫観念めいてると言えないだろうか。フィリップがありのままの自分を愛してくれたからというわけではなかったように思う。フィリップ側がありのままのスティーヴを愛したいと思っていても、スティーヴ側がそれを許容できないのだ。
 ジム・キャリーは、こういう何かが過剰な人を演じるとハマる。本作では途中で体重激減させていてびっくりした。そして滑る姿があまりにも様になっていて目が話せない。手足のポジションがびしっと決まったまま滑るのがツボだった。
 対してフィリップだが、確かに人が良くて優しいことは優しいのだが、スティーヴが思っているようにまるっきりのお人よしかというと、スティーヴが騒がしい隣の牢の男をハメてボコボコにしたのを見て、「僕のためにここまでやってくれるなんて!」と感動したりするから、微妙だ。結構自分たちだけよければOKというタイプなんじゃ・・・。ユアン・マクレガーが妙にかわいくフェミニンに演じている。この年でこの乙女っぽさはすごいよ(笑)。この人はほんとに使い勝手がいいなぁ。どんな役でもそれなりにこなしてしまう。




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