ブレンダン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、少女の死体を発見した。2日前、その少女―ブレンダンの元カノであるエミリー(エミリー・レイヴィン)がブレンダンに奇妙なメッセージを残した。彼女は何かにひどく怯えていた。トラブルに巻き込まれたらしい彼女を助けようと、ブレンダンは彼女の周辺調査を始める。
孤独な男が昔の恋人を助けようと奔走する、古典的ともいえるハードボイルド映画なのだが、舞台が田舎の高校、探偵役が高校生というところが変わっている。ブレンダンはいつもひとりきりでいる、タフで一匹狼な探偵そのものだし、悪女(演劇部の花形女子生徒)、チンピラ(ヤク中の不良)、暗黒街の大物(町の麻薬ディーラー)、情報屋(オタク男子生徒)、警察署長(高校の副校長)、そしてファム・ファタール(コケティッシュな女子高生)と、ハードボイルドものではお約束なキャラクターが、すべて高校とその周辺という舞台に置き換えられているのだ。その置き換えにより不思議なおかしみが生まれている。暗黒街の大物といえばでかい高級車に乗っているというのがお約束だが、本作の麻薬ディーラーは改造ヴァン(内装がリムジン風)に乗っている。基本的に田舎の若者だからアジトは実家で、探りにきた探偵にふるまわれるのがミルクとコーンフレークとかリンゴジュースだったりする。作風はばっちりハードボイルドなので、こういう所が妙におかしい。
しかし登場人物のセリフには、彼らが高校生であることがはっきりとわかる要素は少ない。高校生としての言葉は必要最低限に抑えてある。登場人物を成人男女に置き換えてもそのまま通用しそうなものだ。頑固なくらい、ハードボイルドの定型を守っている。ストーリーを楽しむというよりは、形式を楽しむ映画であるように思う。高校生がハードボイルド劇を演じている、ハードボイルドもののロールプレイングをしているようにも見えるのだ。
ロールプレイングのように見えるというのは、登場人物の内面や性格について、具体的な描写がごく少ないというのも一因だろう。彼らは「~という役回りのキャラクター」であって、その内面はそう重要ではないのだ。しかしそれが物足りないというのではなく、逆にこの映画の持ち味になっている。ストイックとも言える不思議な魅力があるのだ。ミステリとしては(特に後半は)そう精緻なわけではないが、古き良きハードボイルド的な雰囲気は最後(探偵の末路についても)まで維持されていた。ハードボイルド好きとしてはうれしい映画。
おそらく低予算製作だったのだろうが、ミニマムゆえの良さがある。舞台が地方の高校なのも、ロケ地が限定されて安上がりだからか(大人が主人公だとすぐに行動範囲が広がっちゃうし)。監督はライアン・ジョンソン。シンプルでセンスのいい映像だと思う。次回作も楽しみ。ブレンダン役のジョセフ・ゴードン=レヴィットは、メガネをかけているとぼさっとした印象なのだが、よく見ると結構かっこいいところがポイントだと思う。探偵として、クールだけどあまり強くないところも(頻繁にボコられる)ポイント。エミリーとの関係におけるブレンダンのある至らなさが、この映画で最も「高校生」らしさを匂わせるところかもしれない。
孤独な男が昔の恋人を助けようと奔走する、古典的ともいえるハードボイルド映画なのだが、舞台が田舎の高校、探偵役が高校生というところが変わっている。ブレンダンはいつもひとりきりでいる、タフで一匹狼な探偵そのものだし、悪女(演劇部の花形女子生徒)、チンピラ(ヤク中の不良)、暗黒街の大物(町の麻薬ディーラー)、情報屋(オタク男子生徒)、警察署長(高校の副校長)、そしてファム・ファタール(コケティッシュな女子高生)と、ハードボイルドものではお約束なキャラクターが、すべて高校とその周辺という舞台に置き換えられているのだ。その置き換えにより不思議なおかしみが生まれている。暗黒街の大物といえばでかい高級車に乗っているというのがお約束だが、本作の麻薬ディーラーは改造ヴァン(内装がリムジン風)に乗っている。基本的に田舎の若者だからアジトは実家で、探りにきた探偵にふるまわれるのがミルクとコーンフレークとかリンゴジュースだったりする。作風はばっちりハードボイルドなので、こういう所が妙におかしい。
しかし登場人物のセリフには、彼らが高校生であることがはっきりとわかる要素は少ない。高校生としての言葉は必要最低限に抑えてある。登場人物を成人男女に置き換えてもそのまま通用しそうなものだ。頑固なくらい、ハードボイルドの定型を守っている。ストーリーを楽しむというよりは、形式を楽しむ映画であるように思う。高校生がハードボイルド劇を演じている、ハードボイルドもののロールプレイングをしているようにも見えるのだ。
ロールプレイングのように見えるというのは、登場人物の内面や性格について、具体的な描写がごく少ないというのも一因だろう。彼らは「~という役回りのキャラクター」であって、その内面はそう重要ではないのだ。しかしそれが物足りないというのではなく、逆にこの映画の持ち味になっている。ストイックとも言える不思議な魅力があるのだ。ミステリとしては(特に後半は)そう精緻なわけではないが、古き良きハードボイルド的な雰囲気は最後(探偵の末路についても)まで維持されていた。ハードボイルド好きとしてはうれしい映画。
おそらく低予算製作だったのだろうが、ミニマムゆえの良さがある。舞台が地方の高校なのも、ロケ地が限定されて安上がりだからか(大人が主人公だとすぐに行動範囲が広がっちゃうし)。監督はライアン・ジョンソン。シンプルでセンスのいい映像だと思う。次回作も楽しみ。ブレンダン役のジョセフ・ゴードン=レヴィットは、メガネをかけているとぼさっとした印象なのだが、よく見ると結構かっこいいところがポイントだと思う。探偵として、クールだけどあまり強くないところも(頻繁にボコられる)ポイント。エミリーとの関係におけるブレンダンのある至らなさが、この映画で最も「高校生」らしさを匂わせるところかもしれない。