高瀬康司編
 作画、撮影など製作現場の側面からビジネス的側面、作品批評やクリエイターによる必見作品ガイドまで、対談やインタビューを主体に横断的に論じた現代日本アニメーション表現論集。
 論集と紹介してみたものの、主体はインタビューなので各クリエイターにとっての表現論の紹介と言った方がいいかもしれない。また、サブタイトルに「入門」とあるが、監督、アニメーターへのインタビュー・対談部分はアニメーション製作に関する一定の知識がある(作業工程はもちろんだが現状使われているツールも知っている人向けだと思う)ことを前提にした内容(話しているのはプロ中のプロだから当然なのだが)。一方でアニメーションのマーケティング的な側面については割と周知の内容(アニメーションについて多少詳しい人なら当然知っている内容)なので、本著がどういった層を想定しているのかよくわからない。全体的にお勧めというよりも、読者によってこの部分のみ読みたい、というタイプの専門書ではないかと思う。個人的にはやはり前半の現役製作者へのインタビュー、対談が面白かった。井上俊之と押山清高による対談「作画におけるリアリティとは何か」は、世代の違う2人の組み合わせにより、作画の方向性、何を表現しようとするのかという意識の変容という、アニメーション作画の歴史が見えてくる。誰かが記録をとっていたわけではないので、現場にいた人でないと体感としてわからない部分が多いのだと思う。私世代はその「誠実がまた泉津井陽一と山田豊徳による「コンポジットの快楽をめぐって」は現代アニメーションにおける撮影(昔のようにセル画を撮影するわけではないので、便宜上の「撮影」ということだが)のウェイトの重さが改めてわかり面白かった。
 なお、山下清悟と土上いつきとの対談の中で作画における「若い世代の誠実化(キャラ表、演出、スケジュールに忠実)の傾向」に言及されているのはなるほどと思った。これは視聴者の肌感覚としてもわかる。キャラクター作画により原画担当が明確にわかるというケースは最近はあまりないだろう。ただ、スケジュールは別として、私世代はそれだとちょっと物足りないんですよね…。