ミサト(三石琴乃)率いる反ネルフ組織ヴィレは、パリ市街地であるミッションを開始していた。コア化で赤く染まったパリを復元し、エヴァ修復に必要なパーツをかつてのネルフ支部から回収するのだ。復元オペの作業時間はわずか720秒。その時間を確保するため、マリ(坂本真綾)の改8号機がネルフのEVA大群を迎え撃つ。一方、シンジ(緒方恵美)、アスカ(宮村優子)、(仮)アヤナミレイ(林原めぐみ)は日本のどこかをさまよっていた。脚本・総監督は庵野秀明。
 3時間近い長尺なのだが、あー終わった!お疲れ!解散!これで本当に終了、もう続きはないだろう。本作を見てから先日放送されたNHKのドキュメンタリー『プロフェッショナル仕事の流儀』庵野監督回を見たのだが、本当にお疲れ様ですねとしか言えない。監督もスタッフも何年にもわたって心身削ってここまで来たんだなとしみじみた。シリーズに強い思い入れがある人はまた違った感慨や不満があるのかもしれないが、さほどコアなファンではなく一応リアルタイムで並走してきたという程度の視聴者(私にとってのエヴァはやはりTVの延長線なので)にとっては、まあこの終わり方でいいかなと思う。
 ただ、エヴァはもう新しいコンテンツではなくなったんだなということも強く感じた。TVシリーズ放送が1995年~1996年だから最先端でいろというのが無理な話ではあるのだが、ここ20年近く「エヴァ以降」のものを見続けてしまったので、もう本家で何やってもそれを越えた新しさというのは感じないんだろうなと。『プロフェッショナル仕事の流儀』の中で庵野監督は、自分の頭の中にあるものだけでは新しいものは出てこない、自分の外側のものが必要なのだと言う。スタッフを追い込むのも何か予想外のものが出てくることを期待してのことだ。しかし完成したものにそんなに新しさは感じられない(これは私が映像表現の「新しさ」に疎いという面もあるが)、また逆に庵野監督のパーソナルな部分の反映が色濃いのではと思えてしまうというのは皮肉だ。やはり20年前に終わらせておく(本作のようなラストにたどり着いておく)べき作品だったと思う。もっと早くにエヴァの幕引きができていれば、庵野監督によるアニメーション作品をもっと見られたかもなぁという、アニメファンとしての惜しさもある。
 また本作、地に足をつけて現実を生きろ、成熟しとというメッセージ(多分)はこれまでの劇場版と変わらないのだが、生き方・成熟のモデルがかなりコンサバなのではという印象受けた。それを今更やられてもなぁ…先人が散々やった後では拍子抜けだ。とは言え庵野監督も還暦と思うと、年齢的な限界なんだろうかとも。