角田光代・堀江敏幸著
 古今東西の小説や随筆、日記などの作品に登場する様々な「食」は、なぜか読者の記憶に残るもの。「食」を作家たちがどのように描写してきたかを、同じく作家である2人が鋭く読み解き紹介していく。
 角田著と堀江著が交互に配置された食べ物エッセイ。食べ物といっても文学の中の食べ物なので、作家によっては食べ物の質感や味に全く頓着せず、便宜上料理名を出しただけ、というようなこともある。一方で読んでいるだけでよだれが出そうな、実に美味しそうな描写、またこれはいったいどういう味なんだろうと想像が膨らむ描写もある。文学の中の食って、なんでこうも興味掻き立てられるのだろうか。下手すると実際の食よりも全然面白い。特に児童文学の中の食は、食の経験値が低い子供の頃に読むからか、まだ知らない世界に対するあこがれの糸口になる。本著中でも児童文学の中の食(「甘パン」とか)が登場するが、本当にしみじみと食べたかったもんなぁ…。
 ピンポイントで食に関する記述を探し出し掘り下げていく著者2人の読者・批評家としての力量も光る。2人の傾向がちょっと違うのも面白い。角田の書き方の方がより食べたくなる、堀江の書き方はその記述の出てくる作品を読みたくなる方向性だと思う。

私的読食録(新潮文庫)
角田光代
新潮社
2020-11-30