黒猫の妖精・小黒(シャオヘイ)(花澤香菜)は、人間が森を伐採した為に住み家を追われ、あちこちを放浪していた。妖精の風息(フーシー)(櫻井孝宏)に出会い自分の居場所を得たと安堵するものの、、人間の「執行人」無限(ムゲン)(宮野真守)が現れる。中国で2011年から配信されていた『羅小黒戦記』の劇場版として2019年に制作された。監督・脚本はMTJJ。
 当初、口コミで評判が広がったが上映規が小さく、残念ながら字幕版を見ることはできなかった。今回、日本語吹き替え版としてそこそこの規模で上映されたのでようやく見ることができたのだが、これは吹替え大勝利なのでは。豪華かつ手堅いキャスティングですごく楽しかった。花澤さん、立派になって…。
 中国のアニメーションというと、少し前まではデザインや演出が若干野暮ったいというイメージがあったのだが、本作は相当洗練されている。猫型シャオヘイのデザインがちょっと苦手で(目がものすごく大きい)見るのをためらっていたところもあったのだが、動くと正に猫!という柔らかさしなやかさで大変可愛らしい。またフーシーやムゲン、他の妖精たちのデザインもやりすぎず足らなすぎずの匙加減で、魅力がある。デザインは全般的にすっきり目で、動画のカロリーの高さとバランスをとっているように思った。デザイン上、性的な要素が少なめなのも(中国での上映上の条件や対象年齢などの関係もあるだろうが)見やすかった。
 評判通りアクション作画が凄まじい。動体視力が試される速さと強さ(作画が強い、というと変な言い方だが揺らぎ・ブレみたいなものが少なくムラがないように思う)。しかしキャラクターの演技やアニメーションとしての演出自体は日本のアニメーションで見慣れたものだ。日本の観客にとっては違和感なくとっつきやすいが、ここまでクオリティ高く同じ路線で作られると、日本のアニメーション関係者は戦々恐々だろう。差別化している要素がなくなりつつある、かつあっちには圧倒的に資本がありそうだから…。
 本作、作画の良さが評判になったが、何よりストーリーがオーソドックスに面白い、奇をてらわないことをちゃんとやっている、という点が良かった。新しいことは特にやっていないのだが瑞々しい。こういう、お約束事や独自の文法を踏まえていなくても見られるという部分が日本のアニメーションは弱くなっているのではないか。また、ファンタジックではない部分、人間の町やそこに住む人たちの様子がこまやかに書き込まれている、その「場」の魅力を作っているところも魅力だった。


AKIRA
神藤一弘
2020-05-01