ソフィー・エナフ著、山本知子・山田文訳
 パリ司法警察の元警視正が殺された。彼はアンヌ・カペスタン警視正の元夫の父親、つまり元義父だった。更にプロヴァンス、リヨンで起きた未解決殺人事件との関連が浮上する。カペスタン率いる特別班は捜査介入部、刑事部と競り合いつつ捜査を進める。
 前作『パリ警視庁迷宮捜査班』で結成されたカペスタンのチームは癖が強い人材ばかりなのだが、今回は更にキャラが濃くなっている。それぞれの言動が自由奔放さを増しており、新メンバーもインパクトあり。悪乗りギリギリのところまで来ており、三銃士に警察ネズミ(何のことやらさっぱりでしょうが読めばわかります)はやりすぎじゃないの?とちょっと心配になるが、不思議とすっきりしている。ストーリー構成がそれほど入り組んでいないことに加え、チームメンバーがお互いのクセの強さや難点を許容している、そういう人だからそれでいい、としており人間関係があっさりしているからだろう。人間関係の風通しがいいのだ。警察組織らしからぬチームだが、そこがとても魅力的。特にルブルトンとロジエールの、全くタイプが違う同士の友情(と言っていいだろう)が垣間見えるクリスマスエピソードはちょっと感動的だった。2人とも形は違うが優しいのだ。この2人だけでなく、何だかんだでメンバー全員、お互いに思いやりと尊重があるんだよね。これはリーダーである貸すペタンの力量もあるのだろう。今回、カペスタンの意外な一面と先行き不穏さが垣間見え、ちょっと心配ですが…。


パリ警視庁迷宮捜査班 (ハヤカワ・ミステリ)
ソフィー エナフ
早川書房
2019-05-15