浅田家の次男・政志(二宮和也)は写真専門学校に進学し、卒業写真の被写体として家族を選ぶ。浅田家の思い出のシーンを再現したその写真は学校長賞を受賞した。卒業後、仕事もせずふらふらしていた政志だが、再び写真に取り組もうと決意。その題材もまた家族だった。様々なシチュエーションに扮した写真は、やがて木村伊兵賞を受賞。プロの写真家として順調に歩みだすが、2011年3月11日、東日本大震災が起こる。監督は中野量太。
 かなりダラーっとした構成に思えた。もうちょっとカットしてもよかったんじゃないかなという気もしたが、構成・編集が下手でダラーっとするというよりも、このシークエンス内の流れをそのまま保存したい、このシーンのこの人の表情の変化を追い続けたいという意図が入りすぎてのことだったように思う。びっくりするくらいひねりがないというか、王道なつくりで、ダサくても直球でやろうとする作品だった。
 中野監督は一貫して家族の話を撮り続けているが、本作はそのものずばり「浅田家」なのでど直球で家族が中心にある。政志の兄(妻夫木聡)のモノローグで始まるので、これは家族から見た政志の話なのかと思って見ていると、最後は政志のモノローグで終わる。彼にとっての「家族」、自分の家族の姿であり様々な家族の姿であったことがわかる。
 政志が家族写真って何だろうと真剣に考え始めるのはおそらく後半だ。写真家として何をするのかという自覚も、後半になってから考え始める。それまではわりとフィーリングでやってきたけど、深く傷ついた人、自分の想像の及ばない人と相対しカメラを向けるのは、フィーリングだけでは無理なのだろう。ポートレートとは何かをやっと考え始めたな!という印象があった。
 家族の話ではあるのだが、政志本人は家族を愛してはいるけど、家族の為には生きられない人なのではないかと思った。思い付きでぱっと動いてしまうように、常に表現衝動の方が上回る。父親や兄のようには家族を想えないという面はあるのでは。それがダメだというのではなく、そういう人、そういう家族だということだが。
 母親役の風吹ジュンがすごくいい感じなのだが、中野監督は母親という存在に対する思い入れ、期待みたいなものが少々重すぎる気がした。また、黒木華演じる政志の幼馴染があまりにザ・幼馴染キャラというテンプレさで、主人公を支える女性キャラとしての役割しかないのにはちょっとがっかりした。

浅田家
浅田政志
赤々舎
2019-02-28


チチを撮りに
滝藤賢一
2016-04-28