橋本一子・円城塔・王谷晶・大和田俊之・香山哲・木下美絵・楠本まき・栗原裕一郎・田中誠一・谷崎由依・辻本力・中岡祐介・ニコ-ニコルソン・西村彩・速水健朗・福永信・マヒトゥ-ザ-ピーポー著
 2020年の春先から新型コロナウイルスが流行し、日常生活は激変した。各国で感染者死亡者数が増加し行動が制限される中、様々な職業の17人が綴った数カ月にわたる日記を収録したアンソロジー。
 他人の日記は文章が多少下手でもそれなりの面白さがあるものだが、17人いれば17通りの面白さがある。日本国内だけでなく海外(韓国、イギリス、ドイツ)に住む人のものもあるが、感染拡大の進捗時期や政府の対応等が日本とは結構異なり(拡大の仕方自体はそんなに変わらないが、政府の対応は結構違う)、そこも面白い。その場所にいたからわかる切迫感やよそ者として見た時の距離感、また外から日本がどういうふうに見えたかという部分が興味深い。コロナ対応のあれこれで日本の株はだいぶ下がったな…。
 生業も住んでいる場所も違う人たちの日記なので、感染拡大していく状況から生じる危惧や不安、怒りのベクトルの強さ・方向もまちまち。休業状態に陥りもろに経済状況に影響している人も、当面は経済活動を続けられる人もおり、ひっ迫感は当然異なる。また単身居住だったり乳児、幼児を抱えていたりと家族構成も様々。乳児いたら(そもそも不安なのに)不安倍増だし、子供は在宅生活でエネルギーを持て余している。子供がいる状態で保護者が在宅勤務をするのは相当難しいということがしみじみ伝わってくる。コロナ禍によって個々の生活様式、背景の違いによる生活の難易度格差が浮き彫りになってしまったな。ウイルスそのものへの恐怖感の度合いも人それぞれなので、そこでもギャップが生まれる。「私たち」というくくりがどんどん解体されている気がした。
 なお(平常時は)皆さん結構外食やテイクアウトしているんだな…。外食を切望する人が結構いてちょっと新鮮だった。どの人の日記も食事への言及がかなり多いのだが、自分が食にそれほど強い拘りがなくなっているんだなということに気付いた。

コロナ禍日記
マヒトゥ・ザ・ピーポー
タバブックス
2020-08-17


仕事本 わたしたちの緊急事態日記
立川 談四楼 他77人
左右社
2020-06-23