「アメリカで最も惨めな町」に選ばれたイリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザク、ビンはスケートボードに夢中な少年たちだった。ビンは自分たちのスケーティングを撮影し続け、やがて自分たちの生活、思いにカメラを向けるようになる。3人の12年間を追ったドキュメンタリー。監督はビン・リュー。
 スケートボードで走り回り宙に舞う青年たちの姿は軽やかで、何にも縛られていないように見える。ジャンプの瞬間は重力からも解き放たれ、日々の生活のしがらみからも解放され自由だ。とは言えそれはあくまで一瞬で、着地すればまた生活が待ち構えている。3人の少年時代からこの「生活」は見え隠れしているのだが、成長しそれぞれ家族を持ったり仕事を始めたりする中で、更に「生活」は色濃くなっていく。ラストベルトにあるロックフォードはアメリカの吹き溜まり的な扱いで、雇用もないし発展の兆しも見えない。町の風景にも空き家や空きテナントが目立ち、明らかに閑散としている。3人もこの町に未来はないと口にするが、ここから誰もが抜け出せるわけでもない。町を出ていくにも基礎体力(基本的な経済力や計画性・知識など)が必要なのだが、それが削られ続ける、あるいは得ることができない環境にいるのが「貧しい」ということだ。
 特に若者にとっては、家庭が安心できる場、体力を温存でき安定して学習できる場であるかどうかが将来的な貧困を回避する大きな要素になるだろう。キアーもザクもビンも父親(義父)の暴力にさらされ、守られていなかったという背景があることがわかってくる。特にビンの義弟が父親について言及するシーンの言葉の間、ビンへの暴力についての言及や、扉をそっと閉める(大きな音を立てると父親は怒った)姿は、暴力が人にいかに深い傷をつけ、それが回復しないかということを如実に表している。ビンはドキュメンタリーを撮影することをカウンセリングみたいなものと言うが、その境地にたどり着くまでが(彼と母親の関係を見てもわかるが)本当に大変だったと思う。一方で、ザクの恋人に対してビンが「(ザクが)なんで殴るのか僕が聞こうか?」と言うシーンがある。友人と恋人との関係にどこまで踏み込んでいいのかわからないが、暴力を知ってしまった以上何か言わずにいられないというもどかしさも感じた。
 キアーは黒人、ザクは白人、ビンはアジア系だが、少年時代からずっとつるんでおり仲は良い。ビンが向けるカメラの前でここまでさらけ出してくれるのかという驚きと、2人のビンに対する信頼の深さが感じられた。ただ、ザクと他の白人の友人が人種差別ギャグでけらけら笑っている様にはちょっとぎょっとするし、それを見ているキアーが何とも言えない表情をしている。また「白人だって辛いんだ」論を持ち出す人や、それに対して黒人差別の歴史背景を出して諭す人などもいるが、どちらも(前者はもちろんだが)白人。当事者性が薄い所で自分たちのことをとやかく論じられているような気にならないかとハラハラしてしまった。自覚薄い差別というのはこういうことかと目の当たりにした気分だった。

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