黒人の血を引いたヒュー(ヒュー。ハード)、レリア(レリア・ゴルドーニ)、ベン(ベン・カルーザス)の兄妹を中心に、マンハッタンに暮らす若者たちの姿を描いた群像劇。シナリオなしの即興演出で、映画の新たな方向性を確立したと言われる作品。監督はジョン・カサヴェテス。本作が長編デビュー作。1959年製作。
 ヒューは歌手だが段々仕事がなくなっているようで、ストリップショーの司会をやらされるようになり、納得がいかない。歌手であるというプライドを損なわれることに強い怒りを抱き、仕事をとってくるマネージャーにも八つ当たり気味だ。レリアは作家志望でビート族の若者たちとつるんでいるが今一つ馴染めない。ベンは一応ミュージシャン(トランぺッター)らしいが働いている様子はほとんどなく、酒に溺れ気味で不安定だ。彼・彼女らの行動は騒々しく刹那的で「今」を生きている感じが強烈だ。動きも感情表現も騒々しく、エネルギーを持て余しているようにも見える。
 ただ、「今」が火花のようにはじけるほど、その先の未来に期待できないという閉塞感も強まってくる。今を生きる、というよりもとりあえず今しかないから生きる、という感じだ。ベンがバーで絡んできた相手に喧嘩をふっかけるのも、絡まれてきたから喧嘩するのではなく、喧嘩をする為に絡んでいるように見えた。何か爆発させないとやっていられないという哀しさがある。
 3兄妹は黒人の血を引いているが、レリアは見た目はほぼ白人だ。親しくなった青年が彼女に黒人の兄弟がいると知ってたじろぐ。後から「君と僕は同じだ」という伝言をレリアに残すが、取ってつけたようで空しい。理念としては確かにそうなんだけど、じゃあ彼と同じ位置にレリア達が立てるのかというと、そうではない。彼が「同じだ」と言えるのは自分が守られた、強い立場だからで、そこに無自覚なことにレリア達は苛立つのだろう。
 ほぼ俳優の即興で台詞や演技は考えられているそうなので、彼らが生きている時代・場所がダイレクトに反映されている。しかし時代性に頼らず、時代を経た後に鑑賞してもそれが生き生きと感じられるという所が、本作の強さだ。

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