女優のフランキー(イザベル・ユペール)はポルトガルのリゾート地シントラに家族を呼び寄せる。がんの進行が発覚し、自分がいなくなった後のことを考え、余命宣告家族や友人に良かれと思って色々と采配していたのだ。しかし家族らにもそれぞれの事情があった。監督はアイラ・サックス。
 森、山、町、海と緩急に富んだシントラの風景が美しい。目に映るものはまぶしくキラキラしているが、少し寂しい。この味わいが夏休みぽかった。家族親族が集まって、まあ楽しいことは楽しいけど表面上取り繕った感が否めない所も、また夏休み感を強める。。夏休みってこんな感触だったという記憶が呼び起こされる。
 フランキーは自身のことであれ周囲の人間関係であれ、何でも自分の思い通りにコントロールしたがるし、それを実践してきた人だということが窺える。とは言えそこに悪意はなく、家族を自分の友人と息子とがお似合いだからと引き合わせようとする(夫にたしなめられるが)のも、自分が良かれと思ってのことだ。周囲の人間からすると、それぞれ事情ががあるし別の人格なんだから勘弁してほしいという所だろうが。フランキーは何でも一方的に決めてしまうので、周囲は振り回されてしまう。そんな彼女が、一番コントロールしたいであろう自分の体については力が及ばないというのが皮肉だ。
 とは言え、周囲の人たちもフランキーの思惑通りには動かない。家族とは言えそれぞれ別個の人格で他人である、ということが痛感される。本作中では「あなたと同じ考え」という関係性は描かれない。愛し合う夫婦でも親子でも友人でも、考えていることは別でそれが当たり前だ。愛の有無は関係ない。この手のストーリーだとばらばらだった家族が関係を構築しなおすというのが一つのセオリーだが、本作では家族も恋人も他人、いずれは別れ行くものという諦念が底にある。クライマックスの夕暮れシーンはそれを象徴するもののように思った。