駒井稔+「光文社古典新訳文庫」編集部編著
 古典文学の新訳を次々リリースし若い世代の読者も開拓している光文社古典新訳文庫。本シリーズの出版に伴い、出版社と紀伊国屋書店電子書籍サービス(Kinoppy)のコラボレーション企画として、翻訳者を招いた読書会「紀伊国屋書店Kinoppy=光文社古典新訳文庫 Readers Club Reading Session」でのトークを書き起こしたベストセレクション。
 私もこの読書会には何度か参加したことがある(本作収録分だとロブ=グリエ『消しゴム』、トーマス・マン『ヴェネツィアに死す』『だまされた女/すげかえられた首』の回)のだが、毎回面白い。現在、新型コロナ対策の為に中断中だが、機会があればまたぜひ参加したい。
 古典翻訳は現代の作品の翻訳とはまた違った難しさがあるということが、翻訳者の皆さんの話からはわかる。過去の翻訳を踏まえたうえで、意訳しすぎず原典に忠実でありつつ、どのように現代にマッチする日本語にしていくか、悪戦苦闘の数々が語られる。また文学研究の積み重ねやインターネットによる情報入手のスピード化・グローバル化に伴い新たな側面も見えてくる。読者にとっても昔の翻訳で植え付けられたイメージって大きかったんだなと再認識することにもなった。古典新訳文庫の良さは、キャッチフレーズのとおり「いま、息をしている言葉で」古典作品とフレッシュな出会い・再会をさせてくれることだろう。作品の背景を知ると、更に読みたい作品が増えた。とりあえずまだ読んだことがないプレヴォ『マノン・レスコー』、ナボコフ『カメラ・オブスクーラ』を読んでみたくなったし、プラトン『ソクラテスの弁明』は再読したくなった。