記録的大寒波に襲われた真冬のシンシナティ。70人のホームレスが公共図書館に立てこもった。緊急シェルターがどこも満員で、このままでは路上で凍死するというのだ。図書館員のスチュアート(エミリオ・エステベス)は彼らの苦境を見かね、共に図書館に立てこもることになる。監督・脚本は主演もしているエミリオ・エステベス。
 監督としてのエステベスの仕事は『星の旅人たち』しか知らなかったのだが、パブリック=公共とはどういうものかと真っ向から向き合った熱意溢れる作品だった。何より、「図書館は民主主義の最後の砦」であると明言されている、社会における図書館の存在意義がわかる作品。フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を思い出した。アメリカにおける公共図書館の位置づけがよくわかるのだ。図書館は誰もが知識にアクセスできる場であり、知識を得る=生活を助けること、生きる権利を保護することなのだ。冒頭、「臭い」にまつわるトラブル(日本でも頻発していそうで、図書館ユーザーとしては各方面の言い分がわかるだけになかなか辛い…)で図書館側が苦境に立たされるが、図書館の利用が誰にでも保障されているという前提、つまり生きる権利が保障されているという前提が世の中に浸透しているからこその訴えなわけだ。このあたりは日本との民度の違いを感じて、正直羨ましくもあった。
 スチュアートがホームレスらと共闘するのも、仲間や友人だからではなく、それが彼らの権利であり、自分はその権利を守ることが仕事だという信念があるからだろう。ホームレスたちの要求は寒さから身を守りたいというのが第一なのだが、内部の映像を見た人が言うように「デモみたい」なものでもある。こういう苦しみを抱えている者がここにいる、自分たちはここにいるという存在の主張なのだ。警察官たちはそこが見えていないのだが、スチュアートには見えた。
 良い作品なのだが、ちょっと古いなと思った所もある。アパート管理人がスチュアートに積極的に関わるようになる経緯としてセックスが織り込まれている所とか、女性キャスターの能力も知識も共感力もいまいちだが野心は満々な所とか、映画の中の女性の造形がひと昔前っぽい。同僚女性の造形も類型的な図書館ガールとでもいうような感じで、センスいまいちだと思う。

星の旅人たち (字幕版)
エミリオ・エステヴェス
2013-11-26