コリーン・フーヴァー著、相山夏奏訳
 作家としては無名なローウェンの元に、ベストセラー作家ヴェリテの共著者として人気シリーズの執筆をしないかというオファーが舞い込む。ヴェリテは事故に遭い、執筆できる状態にないというのだ。魅力的なオファーだがなぜ自分に?といぶかしむローウェン。更にヴェリテの夫ジェレミーは、トラブルに遭ったローウェンをたまたま助けてくれた人だった。ヴェリテ夫妻の自宅で資料を見ることにしたローウェンだが、ヴェリテの自伝らしき原稿を見つける。
 名のある女性の後釜として屋敷に赴きその夫に惹かれる、しかし彼女の影が付きまとうという展開は『レベッカ』的だが、段々様子が異なってくる。ヴェリテの残した原稿にはジェレミーとの出会いから結婚、出産を経ていく様が綴られていくが、そこには驚くような出来事が記されていた。ローウェンは原稿に引き込まれつつも、そこに書かれた出来事に恐れおののく。普通ミステリだったら、その原稿に書かれていることは事実なのかフィクションなのか?何か仕掛けがあるのでは?と読者としては疑いつつ読むところだが、不思議なことにローウェンはそれが事実だと疑わない。そして意外と額面通りにストーリー展開するのだ。えっそれそのまんまなの?と拍子抜け…していたら最後の最後でそうきたか!しかしそれも額面通りといえば額面通りなのだが。ぐいぐい読ませるがミステリの仕掛けとしてはどうなんだろうな…。
 ただ、ヴェリテが作家、しかも才能ある作家という点が大きな装置になっているところは面白い。ローウェンが原稿を読まずにいられなかったのは好奇心だけではなくその原稿が不愉快な内容であっても上手い、読ませるものだったからだろう。それ故、どこまで「読ませる」ためのものだったのか?どこまで意図しているのか?とざわつかせるのだ。いわゆるロマンチックサスペンスジャンルの作品だしロマンスはあるのだが、ロマンチックが吹き飛んでいる。

秘めた情事が終わるとき (ザ・ミステリ・コレクション)
フーヴァー,コリーン
二見書房
2019-12-19



レベッカ (上) (新潮文庫)
ダフネ・デュ・モーリア
新潮社
2008-02-28