新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は、大物実業家ハンス・マイヤー(マンフレート・ザパトカ)が67歳のイタリア人ファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)に殺された事件で、コリーニの国選弁護士を担当することになった。マイヤーは少年時代のライネンの恩人だった。全く接点のなさそうなマイヤーとコリーニの間に何があったのか。原作はフェルディナンド・シーラッハのベストセラー小説。監督はマルコ・クロイツパイントナー。
 ライネンはマイヤーとコリーニの繋がりを解き明かすために、過去の公文書を紐解いていく。調査する過程に結構分量を割いているのだが、公文書類がちゃんと保管されており公開されているって本当に大切なんだなと実感できる。記録は取れ!そして残して閲覧できるようにしろ!とどこかの国にも言いたくなる。
 「当時は事情が違った」「当時の価値観では普通だった」「組織に命令されただけだ」というのは、よく言われることだ。しかしそれは免罪符になるのか。でも今なら正せるじゃないか、あなたにはそれができるはずだと突き付けてくる作品だ。法律上時効があったとしても、過去の延長上にいる存在として、過去を検証し認識を正していく責任はあるのではないかと。ライネンは個人的な情や絆と倫理観との間で葛藤する。こういう部分と向き合い続けられるかどうかで、その文化圏の倫理性、文化の強靭さが分かれていくような気がする。
 ライネンがトルコ系移民だというのは本作の一つのポイントだろう。ドイツは彼の祖国ではあるのだが、そこでの彼はアウトサイダーだ。少年時代に同世代の子供からトルコ野郎!と罵倒されるシーンがあるのだが、そんなお気軽に罵倒されるものなのかとぎょっとする。その子供はライネンの幼馴染かつ親友となっていくのだが、彼、そして彼の家族の中にはそういう差別意識がずっとあったのではないか。何かの拍子でぽろっと差別意識が出てきそう(というか出る)のが怖い。

コリーニ事件 (創元推理文庫)
フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
2017-12-11


手紙は憶えている(字幕版)
ブルーノ・ガンツ
2017-05-03