売れないハードボイルド作家・市川進(石橋蓮司)、74歳。近年は原稿を持ち込んでも編集者に断られてばかりだった。そんな彼には伝説のヒットマン噂があり、過去に警察にマークされたこともあった。しかしその噂にも実はからくりが。監督は阪本順治。
 何とも懐かしい気持ちになる1作。そういえば昔(80年代くらいか?)こういう愉快でちょっと洒落た(本作はそんなに洒落てないんだけど、「あの頃の洒落てる」空気を再現しようとしているように思う)B級邦画ってあったなという気がしていくる。出演者はベテランばかりで豪華だが、気負った所が全然なくて、よい意味で全編おまけ、余暇みたいな作品だと思う。ストーリー上、あのエピソードのオチはないの?とかあの設定は何か意味あったの?とか細部のつじつまを合わせずに緩くまとめているところもおまけっぽい。それでもゆるすぎたり内輪ウケ的になっていないのは、俳優、スタッフの力量によるものだろう。ゆるくても「映画」というのはこういうものだ、という基本的な所が踏まえられているのではないかと思う。
 あの頃のお洒落さ、ハードボイルド的なかっこよさを盛り込んだ作品だが、ノスタルジーの甘美さにひたりきらず、ユーモラスな方向へと舵を切っている。今となっては市川のやっている「かっこいいハードボイルドしぐさ」はなかなかお寒いものだ。酒とたばこと夜遊びが「洒落」ている世相ではなく、若手編集者にも容赦なく突っ込まれる。それでも自分のかっこよさをやり抜く市川は、やっぱりかっこいいのかもしれない。彼の振る舞いは滑稽に演出されているが、バカにしてはいない。
 市川、石田(岸部一徳)、ひかる(桃井かおり)は長年の付き合い。ただ、過去に色恋沙汰もあれこれあった男女という感じではなく、ボーイフレンド・ガールフレンド的なじゃれあいをずっと続けてきた人たちなんだろうなという雰囲気が出てきた。市川の妻・弥生(大楠道代)としては部外者扱いされたみたいで面白くはないだろうけど…。弥生の扱いは全般的にちょっと軽すぎというか、重く見ていない感じがして、そこはひっかかった。また岸部一徳がセクハラオヤジを演じているが、昔はモテたとかちょいワルおやじとかではなく、ちゃんと「これはセクハラでこいつはクソですよ」という見せ方。娘とのエピソードにも全くフォローがない(そりゃそうだなと納得させる)ところも潔い。

大鹿村騒動記
松たか子
2013-11-26


真夜中まで [DVD]
真田 広之.ミッシェル・リー.岸部 一徳
video maker(VC/DAS)(D)
2007-12-21