服部文祥著
 倉内は週末だけハンターとして狩猟をしている。ある日、小学生の息子を連れて鹿を追っていたところ
、死体を抱えた詐欺集団リーダーの加藤と遭遇してしまう。表題作の他、世界最難関のゆく山での登山家たちの極限状態を描く「K2」の2編を収録した作品集。
 一方で倉内が鹿や熊を追って撃ち取る狩猟の様子、もう一方で加藤が「オレオレ詐欺」その他の特殊詐欺でターゲットから金銭をむしりとっていく様子、2つの「狩り」が同時進行していき、ある一点で交錯する。よりによって最悪のタイミングで出会ってしまう。そこからまた「狩り」が始まるのだが、どちらがどちらを狩るのかスリリングだ。倉内が身を置く狩猟の場は生き物対生き物という、ある意味対等かつプリミティブな世界(人間社会の倫理と生き物としての在り方の間でゆらぐ倉内は少々危ういが)なのだが、そこに加藤が属する欲と金の世界、弱者を食い物にする世界が混入してくる。動物の弱肉強食と、人間間の弱肉強食は全然意味合いが違うという対比がある。狩猟も特殊詐欺も手順の描写が非常に具体的で新鮮だった。「K2」も雪山登山の寒さと危険がひしひしと伝わってくる。どちらの作品も、人間社会の倫理と生物としての本能とのせめぎあいがスリリングで、極限状態の犯罪小説としても読める。

息子と狩猟に (新潮文庫)
服部 文祥
新潮社
2020-04-25


はっとりさんちの狩猟な毎日
服部文祥
河出書房新社
2019-05-21