EUフィルムデーズ2020にて配信で鑑賞。1930年代、幼い少女ビッレは貧しい家庭に育つ。両親は喧嘩が絶えず、父親はすぐにお金を使ってしまい、母親はそれにいらだっていた。ラトビアを代表する作家ビスマ・ベルシェヴィツァの自伝小説を映画化した作品。監督はイナーラ・コルマネ。2018年製作。
 主演の子役が非常にうまい、というかはまっている。変に可愛すぎない所が生々しかった。そして物語としては、子供は辛いよ、であり、大人はわかってくれない、でもあるのだが、大人からしたら子供はわかってくれない、でもある。まだ社会との接点が薄い子供の世界が映し出されていく。ビッレは「パラダイス」を目指して友人らと家出をしたりもするが、基本的に一人でいる子だ。自分の頭の中の世界があり、それは友人とも両親とも分かち合うことが難しいものだ。特に両親に自分の思いを伝えられない、伝わる言葉を持たないもどかしさが感じられた。この伝わらない感じ、子供の頃にこういうことあったなとほろ苦い気分になった。
 ビッレの家庭の暮らしぶりはかなり貧しく、両親はいつも金策にきゅうきゅうとしている。原因はよくわからないのだが、両親ともにあまり世渡りの上手い人たちではなく、何かの拍子にレールから外れてしまいそうな危うさがある。特に母親は人づきあいが下手と明言されており、ビッレに対する態度も不器用。夫や子供への愛はあるが、接し方が荒っぽくなりがちだ。一方で父親もどうも頼りなく、すぐに母親を怒らせる。貧しさと機嫌の悪さが悪循環を起こしていくようで、見ていて少々辛かった。お金のなさは気持ちの余裕のなさと直結しているのだ。
 とは言え、幸福としか言いようのない瞬間も確かにある。両親と「おばさん」にお金を無心しに行った顛末の可笑しさや、友人らと「パラダイス」を目指す高揚感など。ただ、徐々に彼女の世界と両親の世界は離れていく。学校に入ったことでそれは加速していくように思った。同時に、それにつれて家庭内の状況が徐々に良くなっていく感じが面白い。子供を学校に行かせるとその分費用がかかるから大変だと思うんだけど、経済状況が良くなるような何かがあったのだろうか(作中では言及されない)。

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トーマス・フォン・ブレムセン
IVC,Ltd.(VC)(D)
2014-10-24