澁澤龍彦著
 古代ローマの豪華かつ奇矯な料理の数々、フランスの宮廷料理やそこに集った美食家たち、中国の文人が記した食譜など、美食にまつわるものを中心に、美術・芸術にまつわるエッセイを収録した1冊。
 美食を極めると味の良し悪しとはもはや別次元の世界になってくるのか。古代ローマの饗宴も、フランスの宮廷の晩餐会も、ばかばかしいくらい豪華だ。遠方から珍しい食材を取りよせられるということが財力・権力の証だし、宴会の企画力みたいなものもセンスとして問われたのだろう。それにしても、それ本当においしいの?!大丈夫?!みたいな料理が多くて笑ってしまう。18世紀パリで一人ミシュランみたいな存在だったグリモ・ド・ラ・レニエール主催の晩餐は一つのコンセプトアート(趣味がいいかどうかはともかく)のようでもある。なぜ食にここまで情熱を傾けてしまうのか…。
 なお題名には「食物誌」とあるが、実は食に関係ない美術エッセイの方が多い。著者のエッセイを初めて読んだ当時は、出てくる全ての美術品に図版がついているというわけではなかったので(文庫版は特に図版省略されているので)、いったいどういう美術品なんだろうと想像巡らせたものだった。現代はありがたいことにインターネットがあるので、さっと調べることができる。ただ、わかってしまうことで妄想・期待が膨らまないという面もあるな。

華やかな食物誌 新装版 (河出文庫)
澁澤龍彦
河出書房新社
2017-07-28


バベットの晩餐会 (ちくま文庫)
イサク ディーネセン
筑摩書房
1992-02-01