サムエル・ビョルク著、中谷友紀子訳
 敷き詰められた羽の上に奇妙な恰好で横たわる少女の死体が発見された。口には白いユリの花が押し込まれ、周囲にはろうそくが五芒星の形に並べられていた。加えて死ぬ前に虐待を受けていたことがわかった。捜査を始めた殺人捜査課特別班のムンクとミアは、ある養護院に着目するが。
 シリーズ2作目。相変わらず癖のない文章が読みやすく(これは翻訳の良さもあるのだろうが)、事件の展開の引きも強いのでするすると読めた。不気味な殺人現場という設定は前作同様だが、今回はミアもムンクも調子が悪そう。ミアは姉を失った喪失感・罪悪感から逃れられず酒と薬が手放せなくなっていく。前作で少し持ち直したと思っていたら、また逆戻りだ。刑事としての聡明さを知っているだけに、彼女が酒と薬でぼんやりとしている様は読者としてももどかしい。一方ムンクは妻への未練を断ち切れず、彼女とパートナーの姿を見て落ち込む。離婚して十数年たつのに未練を断ち切れないってなかなかのものですね…。彼らの不調をあざ笑うように、猟奇殺人の捜査は決め手を欠く。読者に対してはある程度情報が開示されているのでめぼしはつくのだが、ある妄執に基づいた価値観、そしてそれが提供するものに食いつく欲望がおぞましい。「普通の人」が安全圏から発している分、後者の方が恐ろしく思える。
 なお、ミアの身辺に異変の予兆があるので、自作が気になる。無事翻訳されるといいのだが…。

オスロ警察殺人捜査課特別班 フクロウの囁き (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28



オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28