チャールズ・ウィルフォード著、齋藤浩太訳
 闘鶏家として鶏の飼育と訓練をしているフランク・マンスフィールドの目標は、最優秀闘鶏家賞を獲得すること。それまでは誰とも口を利かないという沈黙の誓いを立てている。ある勝負に敗れて文無しになった彼は、次の試合の為に金策を図るが。
 モンテ・ヘルマン監督により映画化もされた作品(映画は珍作といえば珍作だが…)。闘鶏というニッチな題材と、その世界にのめりこむ男の生きざまを描く異色のノワール。いわゆる犯罪小説としてのノワールではないが、主人公が世間からは理解されない世界にのめりこんでいく、後戻りのできない勢いはノワール的だ。フランクの生き方は闘鶏ありきで、一般成人男性としては色々と難がある。世の中の風習、ルールに染まらず、お金の使い方、稼ぎ方も浮世離れしている。ギター演奏で元手を稼ぐというのはロマンティックすぎて笑ってしまうくらいだ(しかもプロ並みの腕前というからチートすぎやしないか)。愛する女性はいるが、彼女との暮らしを願っているかというとそういうわけでもなく、女性を尊重しているとは言い難い。彼女を愛していると思ってはいるが、彼女の人生に沿うことはできないのだ。闘鶏と言う自分の世界、自分の道でしか生きることができないフランクのありかたは傲慢でエゴイスティックではあるが、突き詰めすぎていっそストイックだし、不器用もいいところだ。いくところまで行ってくれ。
 なお闘鶏シーンや鶏の飼育はかなり詳しく描かれているのだが、動物愛護的には明らかにアウトなので、苦手な方はご注意を。

コックファイター (海外文庫)
チャールズ・ウィルフォード
扶桑社
2020-04-30



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ハリー・ディーン・スタントン
キングレコード
2018-08-08