郊外の住宅地に暮らす17歳のカミーユ(レイチェル・ビンベルク)はスケートボードに夢中だが、怪我が原因で母親からスケートボードを禁止されてしまう。こっそりとスケートボードをしに街に出掛けたカミーユは、女の子だけのスケートクルー「スケート・キッチン」に出会い、メンバーになる。しかしこのことで母親との関係はよりこじれてしまう。監督はクリスタル・モーゼル。
 カミーユが暮らしているのは住宅地(長屋風の集合住宅が並んでおり、わりと庶民的な雰囲気)だが、スケート・キッチンのクルーらがつるんでいる市街地に出るには、電車でそこそこ時間もお金もかかるらしい。ティーンエイジャーにとって距離とお金というのは大きなハードルだ。これは自分ではどうにもならない。
 そしてどういう親の元で生活しているかということも、自分ではどうにもならない。このもどかしさは万国共通だろう。カミーユの母親は決して悪い人ではないし母親としての責任を担える人ではあるが、娘が愛しているもの、彼女の内面の世界についてはあまり理解していない。母親としてはスケートボードは危ないからやめてほしい、せっかくかわいいんだからメイクしておしゃれすればいいのに…という気持ちなのだろうが、それはカミーユがやりたいこと、やりたいファッションとはずれている。心配とは言え、娘のフィールドに土足で踏み込んでくるのはちょっといただけない。友達の前で親と揉めなければならないのはきついなあ(特に10代にとっては)と、あるシーンを見ていていたたまれなくなった。母親は娘が自分が思う「娘」像とは大分違う人間らしいということになかなか気づかないのか、受け入れられないのか。ラストで若干歩み寄りが見えてほっとしたが。最終的に戻るのが親元の「家」であるのは、カミーユの年齢を考えると年齢相応なのだ。

 自宅と街との距離は、カミーユと母親との距離にも思える。かといって彼女が別居している父親の元に行きたいのかというとそういうわけでもない。後にカミーユが自分で家族の事情を口にするのだが、娘が成長していくことを受け入れられない(大人の女性の身体になっていくことを相談できる相手ではない)父親というのはかなり問題があるのでは…。カミーユの生理用品に関する知識に偏りがあって、17,18歳でその理解って大分ずれているのでは?と思ったのだが、そういうことをちゃんと教えてくれる・話し合える相手がいなかったということで、それは心細いだろう。彼女がスケート・キッチンの仲間と一緒にいたがるのはそういう話ができるから、というのも一因なのだと思う。
 女の子たちがボードで町中を疾走し、大声で笑ったり怒鳴ったりしているは小気味良い。よく描かれがちな「女子ならでは」みたいな感じではなく、単につるんで騒いでいるというニュートラルさ、雑さがいいのだ。ただ、会話の中では女性だから遭遇する不愉快さや迷惑行為などがぽろぽろ出てきてなかなかしんどい。また、男の子が絡むと一気にいわゆる「女の子集団にありがちな面倒くささ」みたいな表現になってしまうのは残念だった。恋愛であれ友情であれ個対個の関係だから、親友である自分への報告がないことをそんなに怒ったり裏切り者扱いするか?と思っちゃうんだけど…。

スケート・キッチン(字幕版)
ジェイデン・スミス
2020-04-01



SK8R’S(3) (ビッグコミックス)
トジツキハジメ
小学館
2015-07-10