メアリー・マッカーシー著、若島正訳
 裕福な両親を早くに亡くし、父方の大叔母夫妻の元で、後に母方の祖父母の元でカソリック教徒として育ち、12歳で信仰の道から離れた著者が少女時代の思い出を綴った回想録。
 物にも愛情にも恵まれた環境から、いきなり子供に不慣れな叔母とケチな叔父の元に送り込まれたメアリーの困惑や、みすぼらしい恰好とみなしごであるという境遇から周囲の子供たちから奇異な目で見られる様、それに対するメアリーの反応、またカソリック系の学校に入学してからの女王様的同級生たちへのあこがれと彼女らの歓心を買おうとする必死さ等、軽快だが容赦がない描き方。また、信仰に対する疑問とそれを神父にぶつけていく様、それまでの価値観から軌道を変えていく様など鮮やかだ。子供時代の著者自身のことも家族のことも、思い出としてのノスタルジーを排している。更に各章の後に、章の内容と自分の実体験の記憶に齟齬があるのではという検証、思い出と事実のすり合わせがなされているという念の入れ方。書いたものが嘘にならないようにという意志の強さ(このあたりが信仰の道から離れた要因の一つではないかとも思われた)を感じるのだが、そもそも著者の主観で書かれた時点で純粋な事実とは言えないように思う。更に読者にとっては著者の「検証」自体がフィクションなのでは?とも読める。著者の意図とは違うのかもしれないがメタフィクション的な側面が生じているのだ。

私のカトリック少女時代 (須賀敦子の本棚)
メアリー・マッカーシー
河出書房新社
2019-04-23