加藤周一著
 浅間山麓の追分村で夏を過ごしてきた著者が、避暑地で出会いしたしく交友するようになった文人、文化人たちとの交流を振り返る回想録。
 登場する人たちが大変豪華。軽井沢で文人と言えばこの人という堀辰雄・多恵子にはじまり、中野重治、野上弥生子、磯崎新、武満徹、辻邦生・佐保子らとそうそうたる面子。また実際に会ってはいないものの追分にゆかりの深い立原道造や島崎藤村、一茶にまつわる随筆なども。ご当地随筆(信濃毎日新聞に連載されていた)的な軽い読み物ではあるのだが、著者の交友範囲の広さと、言うまでもなく教養、知の豊かさが窺え、読んでいて気持ちがいい。知性と品性のある文章はやはり良いものだ…。そして、軽井沢、追分に土地勘がある読者には更に楽しいだろう。夏(だけではないのだが)の避暑地の雰囲気、空気感が伝わってくる。老舗の旅館であった油屋の思い出も記されている。避暑地の交友録というとどうせセレブでしょ?みたいな先入観を持たれそうだが、そういう華やかな雰囲気はない。知性による交友というある意味厳しさをはらんだ関係性だからか。


私にとっての20世紀
加藤 周一
岩波書店
2000-11-28