ハーラン・エリスン著、浅倉久志他訳
 ハーラン・エリスン編纂アンソロジーシリーズ第三弾にして完結編、完全版での邦訳。シオドア・スタージョン『男がみんな兄弟なら、そのひとりに妹を嫁がせるか?』、R・A・ラファティ『巨馬の国』、J・G・バラード『認識』など、ビッグネームの作品が並ぶ。
 相変わらずエリスン本人による序文がもってもわった癖の強さで、どうかすると本編よりも面白かったりする。作家によって序文のボリュームがまちまちすぎるのも、エリスンとの関係性が垣間見えて面白い(短いから疎遠というわけではなく、書きやすい人と言葉にしにくい関係の人がいたのだと思う)。更に、人と人との関係の在り方の方が、小説そのものよりも古びにくい(人間関係のあれこれ自体は数十年レベルではさして変わらない)からだろう。SF小説は、書かれた時代には時代の最先端だったが後の時代にそのとんがりが持続しうるのか、という問題をはらんでいると思うが、古さを感じる/感じないという分かれ目はどこにあるのかということを、このアンソロジーを読んでいてずっと考えていた。後の社会で変化が大きかった分野に深く関わった作品は、当然古びるだろう。特にセクシャリティ、マイノリティについての認識が大きく変わってきたことが今読むとわかる。ヘンリイ・スレッサー『代用品』は今だったら(内容をふまえると)題名の時点でアウトだ。時代を超えて魅力を感じられる小説って貴重なんだな…。

危険なヴィジョン〔完全版〕3 (ハヤカワ文庫SF)
ハーラン エリスン
早川書房
2019-08-06





愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)
ハーラン・エリスン
国書刊行会
2019-05-25