カミュ著、宮崎嶺雄訳
 アルジェリアのオラン市でペストが流行し始める。医師のリウーは病気の妻を転地の為に送り出し、自身は病に倒れる人たちを助ける為に奔走する。しかしペストは広がり続け、リウーをはじめ治療に携わる人たちは疲弊していく。
 新型コロナウイルス流行に伴いにわかに注目されたカミュの作品。確かに今読まないとこの先読み逃し続ける気がしたので手に取った。どちらかというと抽象・観念的な小説かと思ったら、むしろルポルタージュ的な、記録小説的なタッチで意外。他のカミュ作品と比べても大分リアリズム寄りなように思う。疫病が蔓延し始めたら人びとはどのように行動するのか、行政は、医療はどうなるのか、ちゃんと想定して書かれている。特に集団がどのように動くかという部分には、今まさにリアルタイムで体感しているものだと感じた。感染対策にちょっと疲れた人たちの気が抜けてやや浮かれちゃうところとか、なかなかリアルだ。追い詰められた状況で人の高潔さが現れる、が、むしろそれ以上に暴力性や愚かさが目立ってしまう。ペスト流行の中に自分の居場所を見つけてしまう(つまり病気の恐怖の元では皆平等だから)男の姿には危うさを感じた。

ペスト (新潮文庫)
カミュ
新潮社
1969-10-30