伊井圭著
 明治42年9月。日本一高い建物と評判の浅草十二階で幽霊が目撃されたと、僕こと金田一京助の元に、親友の石川啄木が話を持ち込んできた。生活費を稼ぐ為、石川は探偵業を始めていたのだ。石川の才能にほれ込んでいる金田一は、探偵業の助手として現場に同行するが。実在の歌人と国文学者を探偵役にした連作ミステリ。
 石川啄木と言えば歌人にして希代の借金王、そして彼に多額の貸付(ほぼ返済されなかったとの話だが)をしていたのが友人で国文学者の金田一京助だったというのは、日本文学史に興味がある人にとってはお馴染みのエピソードだろう。よくまあそれだけ面倒見たなと感心するというかあきれるというか。その、つい面倒見てしまう様が本作の中でも存分に描かれている。広義の惚れた弱みっぽい、こいつの為なら仕方ないなという腹のくくり方(というほど器の大きいものでもないのだが)がコミカルでもあった。ミステリとしてはどの話もちょっと構成が似ているのが難、かつ犯人および関係者像が少々薄っぺらい(記号的すぎる)感はあるが、時代背景が色濃く見えて楽しい。石川の立ち居振る舞いがちょっとスマートすぎる気がするんだけど(笑)、彼の人生の短さを知っていると遊び人風振る舞いも何だか物悲しい。

啄木鳥探偵處 (創元推理文庫)
伊井 圭
東京創元社
2008-11-22


文豪たちの友情 (立東舎)
石井 千湖
立東舎
2018-04-13