パリ郊外、モンフェルメイユの警察署に赴任してきたステファン(ダミアン・ボナール)は犯罪防止班に加わる。激昂しやすく警官としての力に疑いを持たないクリス(アレクシス・マネンティ)とグワダ(ジェブリル・ゾンガ)のやり方には賛成できないが、一緒にパトロールに回ることに。そんな折、少年イッサが起こしたある事件が、元々緊張状態にあった複数のグループの関係に火をつけてしまう。監督はラジ・リ。
 子供たちによる冗談みたいな事件(監督の子供時代に実際にあった事件だというからびっくりだが)から、地域内に火がついて大炎上していくスピードがあっという間。実はほぼ1日の話なのだ。短時間で泥沼化していくのは、問題が起きたからというよりも、元々火種がくすぶり続けていたからだ。パリは多民族の町ではあるが、実際にはそれぞれの民族、文化圏が群れのように固まっており、決して友好的ではない様子が伝わってくる。人種・民族による横の分断のようなものと、警察と団地住民といったような階層的な縦の分断みたいなものがある。分断もまた重層的なのだ。団地の住民たちによって抑圧の主である警察官たちも、仕事から離れると他の住民と同じようにその地域ごとの「群れ」に戻っていく。
 暴動の起こり方・発展の仕方も、そこからそっちの方向に向けてなの?!という意外性があった。主義主張によるものではなく、日常の抑圧や不満が爆発したという感じだ。テロリズムみたいなものとは違って、あくまで「暴動」なんだなと。怒りの方向性がばらばらでこれもまた一方向ではない。エネルギーは大きいが散漫なのだ。それだけに、脈略なく拡散していくし収束の形が見えない。出口がないのだ。暴動を起こしている側もどこに対して何をぶつければいいのかわかっていない感じで、それがラストシーンの強烈さにつながっている。えっそこで終わるの?!とびっくりした。

憎しみ [Blu-ray]
フランソワ・レヴァンタル
ジェネオン・ユニバーサル
2009-09-18