エリザベス・ストラウト著、小川高義訳
 アメリカの田舎町アムギャッシュに暮らす、教師や農家、写真家など「普通」の人たちの日常と、この町から出ていき作家になったルーシー・バートンの新刊が日常に起こすさざ波を描く連作集。
 著者の『私の名前はルーシー・バートン』の姉妹編だそうだ。本著の中に出てくる作家の新刊本というのが、このルーシー・バートンの新作で、ルーシー自身も登場する。本作に出てくる人たちの多くは、過去へのわだかまりを解決できないまま、ずっと引きずっている。人によっては何がわだかまりなのかも自覚していない。わだかまりの正体を突き付けられる、あるいは徐々に受け入れていく過程を描いた作品が多いように思った。普通の人たちの普通の生活を描いたと言えるのだろうが、「普通」は人それぞれであり全ての人生は異なる。他人の人生がどういうものかなどわからないし、人生の評価など当人にだってできないのだろう。細部の具体的なディティールの積み重ねがそれぞれの人生が唯一であることを際立たせていた。特に親子や兄弟の間の気持ちのしこりのようなものの描き方が、自分の中にあるものと呼応して、なかなか胸に刺さる。

何があってもおかしくない
Elizabeth Strout
早川書房
2018-12-05


私の名前はルーシー・バートン
Elizabeth Strout
早川書房
2017-05-09