1980年のアラバマ州。若き弁護士ブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)は、犯していない殺人罪で死刑宣告を受けたウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)の弁護をすることになる。しかし虚偽の証言や白人の陪審員たち、証人や弁護士事務所への脅迫、そして根強い人種差別という壁が立ちはだかる。監督はデスティン・ダニエル・クレットン。
 「顔を見れば(有罪だと)わかる」と裁判官が言い放ってしまうレベルの強烈な人種差別が横行しており、死刑判決もあまりに雑(びっくりするくらいろくに捜査をしていない感じ)なのでだいぶ昔の話なのかと思ったら、まさかの80年代で愕然とした。アラバマという土地柄もあるのだろうが、ついこの間までこういう価値観がまかり通っていたのかと。
 ブライアン自身は他の土地からマクミリアンの為にやってくるのだが、母親に「大学を出る前はもっと賢かったのに」と嘆く。アラバマで黒人が黒人死刑囚の弁護をやるというのは、そのくらい損なこと、危険なことということなのだろう。せっかくいい大学を出たのに出世を棒に振るなんて、というわけだ。そもそも親としては自分の子供を危険な目に遭わせたくないだろう。とは言え、そういう賢さ、如才なさは世界を良くはしない。ブライアンの仕事のような、無謀にも見える正しいことをやろうとする意志が世の中を変えていくのだろう。
 ブライアンは頭はいいのだろうが、突出して切れ者なわけではない。アラバマでの偏見や嫌がらせに対しては当初少々見込みが甘くて、はらはらさせられる。彼がやるのは地道な調査と交渉、何よりクライアントと真摯に向き合い続けることだ。ちゃんとした弁護士としてはごくごく一般的なことだろう。ただ、その一般的なことをずっとやり続ける、心を折られてもあきらめずに立ち上がり続けることがいかに難しいか。
 被告という立場でありブライアンのクライアントとなるマクミリアンもまた、絶望的な状況の中で人間としての倫理や思いやりを維持し続けようと耐えてきた人間だ。受刑者仲間を励ます彼の言葉には真摯な思いやりがある。そういう人だからブライアンと共に戦い続けられたのではとも思った。

ラビング 愛という名前のふたり(字幕版)
マイケル・シャノン
2017-09-01


ショート・ターム [Blu-ray]
キース・スタンフィールド
TCエンタテインメント
2015-06-03