霜月蒼著
 ミステリの女王といえばアガサ・クリスティー。ミステリ評論家でありながらクリスティーの作品を7作しか読んだことがなかった著者が、クリスティ作品100冊を読み込み評論するまさに「完全攻略」読本。
 私はクリスティ作品はそこそこ読んでいるつもりだったが、読んでいない作品がこんなにいっぱいあったのか!そして読んだはずの作品も全く内容を覚えていない!ということが本著を読んでわかりました。ネタバレにも配慮されているので、クリスティ初心者にも、そこそこ読んでいるよという人にも(皆さん私のように忘れっぽくはないだろうが)ブックガイドとしてお勧めできる。また、クリスティ作品の何が面白いのかということを、作品の数をこなすにつれて著者がだんだん掴んでくる過程が見え、そこも面白い。著者の読み手・評論家としての道筋が記されているのだ。本著内でも言及されているように、クリスティは決してトリックメイカーではなく、「ミステリとしてどう見せるか」という部分に長けてた作家なのだと思う。
 私はポアロよりもミス・マープルものの方が好きなのだが、著者のシリーズ内番付には納得。あれはやはり名作ですよ…。そしてミス・マープルはやっぱりかっこよかったんだなと改めて認識した。ポワロよりもクールなんだよね。また、私がクリスティの短編集の中で一番好きな『謎のクィン氏』が高評価でこれまたうれしい。あまりスポットがあたらない短編集ではあるが、お勧めです。


ポケットにライ麦を (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
2003-11-11