将来有望志されているボクサーの葛城レオ(窪田正孝)は、試合で予想外のKO負けをした。病院へかつぎこまれた彼は、余命わずかと告げられ呆然とする。歌舞伎町をふらついていた彼は、男に追われる少女モニカ(小西桜子)を助けるが、彼女はヤクザに追われていた。レオはなりゆきでモニカと共にヤクザに追われることになる。監督は三池崇史。
 三池監督、久々の快作ではないだろうか。アバンの流れの良さと題名が出るタイミング、全般的なテンポの軽快さ、ブラックユーモアとアクションとバイオレンスのバランスがいい。血肉とおかしみの過剰さで見落としがちだが、手堅くオーソドックスな映画の作法を守っている監督なんだよなと再確認した。ショットのつなぎ方とか、ちょっと懐かしい「映画」(本作は東映映画なのだが、本当に東映ぽい)だ!と実感させるものがある。ちょっと古臭いのではと思われそうな演出をきちんとやっていくという、律儀な作品とも言える。
 ブラックユーモアや盛りの良いアクションが前面に出ているものの、本作はちゃんと「初恋」の話で、ど直球なボーイミーツガール。茶化さず大真面目にラブストーリーをやっており、その一方でゲラゲラ笑えるところがいいのだ。ラブストーリーといってもいわゆる恋というよりも、もうちょっと幅の広い意味合いの愛情がレオとモニカの間にあるように思えた。そもそも2人の関係は、たまたまそこに居合わせただけというものだ。しかしレオが彼女の為に何かをしようと決意し、モニカがレオに助けを求めようと決めた時、関係が動き出す。
 この人でないと絶対駄目だ、という情熱的な関係は、むしろやくざの頭・権藤(内野聖陽)とチャイニーズマフィアのタン・ロン(三元雅芸)の間にあったように見える。こいつは必ず俺が殺すというお互いへの執着はもはや恋。また、ジュリ(ベッキー)の暴走特急のような愛による復讐劇はもはや清々しい。ベッキーは本作中ベストアクト、彼女のフィルモグラフィーにおいてもベストアクトではというくらいの切れの良さだった。こんなに体の動く人だったのかという発見があってすごくうれしくなった。
 俳優が皆好演している。いまだに初々しさを失わない主演の窪田、小西(新人だそうだが役柄にすごくはまっており良い)はもちろんだが、その他も豪華。若手ヤクザ役の染谷将太の軽さ・コミカルさはもちろん、昔気質の渋いヤクザを演じる内野がちょっとしたところで見せるユーモラスさ(スマホの使い方教えてもらうところとか)もいい味が出ている。またヤクザの親分代行役の塩見三省はちょっと間が抜けているのにやたらと色気がある。あの手袋の外し方、漫画でしか見たことがないやつだよ!


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2020-01-28