岩手県に転勤してきた今野(綾野剛)は同僚の日浅(松田龍平)と親しくなる。2人で酒を飲みかわし釣りに出かけ、青春時代のような日々を送っていたが、日浅は突然誰にも告げずに会社を辞めてしまう。数か月後に日浅はふらりと姿を現すが、2人の関係はどこか変わっていた。原作は沼田真佑の同名小説。監督は大友啓史。
 岩手県盛岡市を舞台に、岩手出身の大友監督が撮った本作。盛岡ご当地映画でもあり、風景やさんさ踊りの情景等、映像が美しい。ただ、地元愛故に若干冗長になっていないか?という気もした。ドラマ展開はかなり抑制を利かせており(原作がそうなのかもしれないが)起伏は乏しくもある。間延びしすぎそうなところを綾野の存在感でもたせているような作品。綾野の力にちょっと頼りすぎな気もする。確かに綾野剛のあんな姿やこんな姿を見たいし撮りたいでしょうが!ちょっとやりすぎ!と突っ込みたくなった。生足そんなにさらさなくても…。
 序盤、震災後だから節電しており暗いというだけでなく、異様な不穏さ(出てくるだけで不穏さをかきたてる筒井真理子の威力よ)が漂う。そこから一転、過去に遡り、今野と日浅の交流が描かれていく。これがあまりにキラキラしていてまぶしく楽しげ。つるんでいるだけで愉快、蜜月状態といってもいいくらいの親密さなので、今野が油断してしまう、期待してしまうのも無理はないし、期待のすれ違いが切なくもある。
 まぶしい時期があったからこそ、日浅が一体何者だったのかという謎が深まる。あのまぶしさは日浅がそういう振りをしていただけ、打算によるものだったのではないかと。そういう側面もなきにしもあらずだろうが、日浅は日浅なりに今野に対する友情、誠実さを持っていたのではないか。最後、ちらっと見える書類の内容にもそれが(そこかよ!というツッコミはしたくなるけど)垣間見えるのでは。ただ、全部いい思い出、みたいな落とし方にはちょっと疑問があった。棘のようなものはずっと残るのではないかな。
 全編抑制が効いているのだが、セクシャリティの描き方はちょっとひっかかる。それが特別なことではないという配慮はされているのだが、ゲイの男性は立ち居振る舞いがフェミニンなはずという先入観があるように思った。フェミニンな人もいるだろうけどそれはセクシャリティとはあんまり関係ないんじゃないかなー。もっとフラットでいいのでは。

影裏 (文春文庫)
沼田 真佑
文藝春秋
2019-09-03