被虐趣味を持ち様々な男と関係を持ってきた真誠会若頭の矢代(新垣樽助)の配下に、雑用係として百目鬼(羽田野渉)がやってくる。矢代は百目鬼をなんとなく気にいり、からかいつつ傍に置くものの、距離を保つ。百目鬼は愚直に矢代に従いながら、自己矛盾を抱える彼に惹かれていく。原作はヨネダコウの同名漫画。監督は牧田佳織。
 超人気かつ名作BL漫画のアニメ化。私は原作は読んでいるものの、アニメ化された本作について事前情報をあまり入れていなかったので(ネタバレというわけではないので書いてしまうが)、最後の最後であっこれ続くんだ!と気付いた(原作連作中だからそりゃそうだろうという話なのだが)。まあ次作も見ますけれども…。
 原作と原作ファンを尊重した丁寧な映像化だと思うのだが、それが映像化として面白くなっているのかというと、ちょっと微妙な所だと思う。もちろん原作のストーリーが面白いからそれに沿って作って作っている以上一定水準の面白さはあるのだが、絵が動くという、アニメーションならではの面白みみたいなものはあまり感じない。原作の絵の通りですね、このシーンはあのコマですねという感想になってしまう。そもそも原作は物理的な動き=運動の多い作品ではないから、アニメーション化に向いているかというと、ちょっと微妙なのでは。コマ内が割と静止画寄りというか、コマとコマとの間にあまりダイナミックな動きの演出はないように思う。それが整理された読みやすさに繋がっているのだが。原作の魅力であるモノローグも、映像化した時にはもっと削っていいのではとも思った。そのモノローグが表現するものを映像として見せてほしいんだよな。
 とは言え、映像化されて本作が持つメロドラマ要素が際立ってきたところは面白い。メロウ寄りな音楽の効果もあるのだろうが、言葉を音声化することで強調されるものがあるんだなと再認識した。百目鬼は矢代のことをきれいだと言うのだが、BL漫画だとこれは常套句なので読者側はわりと流してしまいがちなように思う。しかし映像と音声で表現されると、男性に対してこの表現を使うことってあまりないなと(使って全然良いと思うけど)現実に引き戻される。と同時に、百目鬼にとってこの「きれいだ」という表現は非常に特別なもの、彼にとって矢代は何か代えがたいものなんだなと伝わってくるのだ。


どうしても触れたくない [DVD]
米原幸佑
ポニーキャニオン
2014-09-17