ロン・リット・ウーン著、枇谷玲子・中村冬美訳
 交換留学生としてノルウェーにやってきたマレーシア人の著者は、エイオルフと出会い恋に落ち結婚。しかしある日、エイオルフが急死してしまう。喪失感に苛まれる中、著者はふと参加したきのこ講座できのこの世界の魅力に出会い、魅了されていく。
 ちょっと風変わりとも言える随筆。題名の通り、スポットが当てられているのはきのこだ。北欧(ロシアもかな?)の小説を読んでいると頻繁に「きのこ狩り」が出てきて、子供の頃には随分と憧れたものだが、本著を読む限り、ノルウェーの人たちは頻繁にきのこ狩りをするしよくきのこを調理して食べている。気軽に参加でき奥の深いレジャーとして一つの定番になっているようだ。本著に登場するのは主に食べられるきのこ。きのこ狩りの醍醐味はやはり食べることにある。少々危険なきのこでも試しに食べてみるという好奇心を発揮したり、トガリアミカサダケの風味の絶品さ(ものすごくおいしいらしい…気になる…)に思いをはせたりと、きのこの世界が広がっていく。そして、きのこへの造詣が深まるうちに、夫を亡くした深い喪失感から回復していくのだ。きのこと喪の仕事に関連があるというより、きのこについて知る時間が、自分の感情や思い出と向き合う時間になっていくのだろう。作業として著者が置かれた状況にはまった、ちょうどよかったのかなと。喪失感がなくなることはないが、夫との記憶が収まるべきところに収まったように思えるのだ。

きのこのなぐさめ
ロン・リット・ウーン
みすず書房
2019-08-20