第一次大戦中に撮影された2200時間に上る記録映像を修復・着色し、BBCが保管していた退役軍人たちへのインタビューから音声や効果音を追加。ピーター・ジャクソン監督による記録映像の再構築。イギリスの芸術プログラム「14-18NOW」と帝国戦争博物館の共同制作。
 大変な労作だということが見るだけでわかる。100年前の映像だから当然劣化しているし音声はついていない。それを修復、着色し、映像と一致するインタビュー内容を音声として加え、更に被写体の唇の動きから何を話しているのかを割り出しているそうだ。付け加えられた映像内でのやりとりはかなり正確なものということだろう。まさに技術の勝利というべき作品。単に「記録」としてしか見られなかったであろう当時の映像が、色と音が加えられるとこんなに生き生きと蘇るのかという驚きがあった。この人たちは実際にあそこにいて生きていた、個々の人生があった様子が立ち上がってくるのだ。また、全体の構成・編集も上手い。99分というコンパクトさなのだが、若者たちが高揚しつつ戦場に向かうところから、軍隊でしごかれ、徐々に変化していき、前線は泥沼化していくという経緯を記録映像だけでなく当時の広告や新聞記事等も交えてテンポよく見せていく。ここぞというシーンの選び方、つなぎ方が効果的でドラマティックに、面白くなっている。ジャクソン監督、この手さばきを他の自作で見せてくれればよかったのに…。
 とても面白く興味深かったのだが、面白いが故にもやもやする。あまりにも演出が上手く、「面白い映画」になってしまっているのだ。本作に映し出された情景はもちろん実際にあったものであり、出てくる人たちは一人一人の身元はわからなくとも実在した人々だ。積み重なる死体も、実際に生きていて死んだ人たちのものだ。彼らの生き死に、死体の映像を娯楽として無邪気に享受してしまっていいのか?という葛藤を感じた。通常ドキュメンタリーを撮る際は当然ながら実在の人物・事象が目の前にあり、撮影することは時に暴力的だという意識を持ち続けなければならないものだと思う。撮影者と被写体との間には常に何らかの緊張感があるだろう。
 しかし本作の場合、対象はすでにいなくなっている人たちであり、監督が被写体と直接接したことはもちろんない。撮影ではなく編集であることで、そういった緊張感がうやむやになっているように思った。また、これだけ加工、編集したら歴史資料とは厳密には言えないのでは?という気もする。確かに面白いのだが、倫理的にこの面白さはOKなのか?と悩んでしまう。


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2013-12-21