カザフスタンの草原で家族と暮らす少年オルジャス。ある日、市場へ馬を売りに行った父親が戻らなかった。母アイグリ(サマル・エスリャーモバ)が警察に呼び出され、父親の死が告げられる。村で葬儀が行われた後、カイラート(森山未來)という男が母を訪ねてくる。監督は竹葉リサとエルラン・ヌルムハンベトフ。日本・カザフスタン合作となる。
 カザフスタンの草原が雄大で、人々の暮らしは厳しくもどこかのどかだなと眺めていたら、途中から急速にハードな展開になる。角度を変えたらノワール風にも犯罪映画風にもなりそうだ。とは言え少年の視点から描かれているので、一番重要なのは彼にとって「父親が帰ってこない」という所だ。父親に実際のところ何があったのか、母親が村の中で置かれている微妙な立場の理由や、彼女の過去に何があったのかという、大人の事情のドラマは最前面に出てくるものではなく、あくまで背景だ。そして、少年にとっての父親は消えた父親だけで、誰かが代わりになれるわけではない。
 森山演じる謎の男・カイラートが登場すると、ちょっと西部劇的な味わいも出てくる。街から離れた草原が舞台で、馬に乗って活躍するシーンがあるからというだけでなく、疑似父親的な男が現れ母子を助ける、というシチュエーションも西部劇っぽい。森山がまた予想外に様になっているのだが、まさか銃器が出てくる映画だと思っていなかったのでちょっとびっくりした。
 少し不思議だったのが、文化的な背景。父親たちが市に向かう前に祈りをささげるのだが、最後アーメンで締める。しかし葬儀はイスラム教に則ったもの。父親だけ宗教が違うというわけでもなさそうだし、どういう文化圏なのか気になった。ロシアに近いエリアのようなので、キリスト教文化も流入しているということなんだろうか。

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