CM監督のトビー(アダム・ドライバー)はスペインの田舎で撮影中に、かつて自分が学生時代にこの地で撮影した映画『ドン・キホーテを殺した男』のDVDを見つける。当時の出演者を訪ねるが、ドン・キホーテ役だった靴屋の老人(ジョナサン・プライス)は自分が本物の騎士だと思い込み、ヒロイン役だったアンジェリカ(ジョアナ・リベイロ)は女優になろうと故郷を飛び出し富豪の愛人になっていた。監督はテリー・ギリアム。
 2000年にクランクインするも様々なトラブル、資金難によりとん挫を繰り返し、なんとかかんとか完成した本作。ギリアム監督にとっては30年来の構想だったというから、そりゃあ感無量だろう。とは言え、積年の思いが込められた作品にしては割と普通。ドン・キホーテの物語に取りつかれその中に取り込まれていく人たち、映画の魔のようなものを描いた作品だが、本作自体にはそれほど魔を感じない。構想が経年するうちにだんだん薄味になってしまったのか、様々なハードルを越えるうちにギリアム監督も物分かりがよくなったのか。
 靴屋の老人はまさにドン・キホーテ本人として振る舞い、トビーをサンチョ・パンサと思い込み彼を翻弄する。最初はツッコミ役だったトビーも、段々ドン・キホーテの世界に引きずり込まれ、老人の妄想を共に生きるようになる。妄想が他人を巻き込む、それこそが映画というものなのかもしれない。新たなドン・キホーテが生まれ、サンチョ役が自らサンチョとして相手の妄想に乗っかっていくのは意外。ただ、どちらにしろわりと予定調和的な妄想で少々物足りなかった。確かにすごく豪華なつくりのはずなんだけど、あんまりスケール感を感じないのが逆に不思議。

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