バンド「ECHOLL」でのデビューを目前に事故死したアキ(新田真剣佑)。彼が残したカセットレコーダーを拾った大学生の颯太(北村匠海)は、中のカセットテープを再生してみる。すると30分だけアキが颯太の体を借りて入れ替わる。2人は颯太の体を共有し、ECHOLL再結成の為に奔走する。しかし2人が入れ替われる時間は段々短くなっていく。監督は萩原健太郎。
 予想外の良さでびっくりした。若手人気俳優を起用した、さわやかな若年層向け作品ではあるのだろうが、カセットテープというレトロ(最近復権してきたけど)なモチーフを使っているところが面白い。再生時間の制限や「巻き戻し」という仕組みが入れ替わりシステムとリンクしており、カセット世代にはイメージとしても懐かしいのでは。
 一人でいるのが好きな颯太は、アキによって生活を引っ掻き回される。迷惑がる颯太だが、誰かと一緒に音楽をやる楽しさに目覚め新しい世界に心を開いていく。一方でアキも、颯太を通してかつての仲間や恋人を見ることで、自分の時間が止まっていたことに気付き認識を改めるのだ。颯太が就職活動中というのも要素として利いている。本来の自分を偽装してウケがいいように演じなければならない(と思わされている)から、面接だけ「ウケ」のいいキャラに交代できればなと思ったり、本来の自分の良さを見失ったりしがちな時期で、「入れ替わり」のハードルが下がるのだ。
 2人が変化し一歩を踏み出す物語だが、アキの恋人カナ(久保田紗友)の喪の仕事という側面も踏まえられており、彼女が添え物に甘んじていない所がよかった。バンド内での存在感はそんなにない(彼女のパートがなくても成立しそうな曲だ)ところがちょっと辛かったが。
 作中の楽曲がしっかりしており、「デビュー間近だったバンド」という設定に説得力が出ている。エンドロール曲もストーリーの内容をきちんと踏まえたものにしているあたりにもこだわりを感じた。ライブハウスの集客度合いや地方のフェスの規模感もわりとリアルなのでは。音楽面の演出をちゃんとしようという意欲が感じられた。


[新版]幽霊刑事 (幻冬舎文庫)
有栖川 有栖
幻冬舎
2018-10-10