ル・マンでの勝利を目指すフォード社から依頼を受けたカーデザイナーのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)は、イギリス人レーサーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)をドライバーに抜擢する。クセの強い2人はフォード社と軋轢を起こしつつ困難を乗り越え、1966年のル・マン24時間耐久レースを迎える。監督はジェームズ・マンゴールド。
 150分以上とそこそこの長さなのだが、体感時間はそんなに長く感じない。構成に無駄な部分がなく、むしろスピード感がある。レースシーンも、それこそスピードを体感できるような臨場感溢れるもので気分が上がる。わざわざ本物の車を使って撮影したそうで豪華。エンジン音もいいので、音響設備の良い劇場で見ることをお勧めする。しかし何より心に響くのは、シェルビーとマイルズという、2人のはぐれものの絆だ。
 レーサーとして功績を残したが健康上の理由で引退せざるを得なかったシェルビーにとって、マイルズは仕事のパートナーであると同時にもう一人の自分でもある。自分の思いが強くなかなか企業のルールになじめないマイルズへの共感もあるし、自分に出来なかったことをマイルズに託している面もある。フォード側は企業故に確実な成果や広告効果を求める。しかしそれは自己の経験とインスピレーションで動き、自分のやり方を貫きたいシェルビーやマイルズにはそぐわない。世渡り下手なマイルズを守るためにあの手この手でフォードをいなし(結構悪辣なこともやっている…)、「俺のドライバーに近づくな」とまで言い放つシェルビーの奮闘には泣けてくる。これは愛だよなぁと。マイルズへの同胞愛でありレースそのものに対する愛だ。そして最後、シェルビーの思いにマイルズがある行為で応える様にはまた泣ける。その行為は、マイルズにとって命のように大切なものを明け渡すことに他ならないのだ。
 題名からはフォードとフェラーリという2大企業の対決のように見えるが、実際は2人の男が企業の理論と戦うという側面の方が大きく、それゆえほろ苦い。2人の理念はむしろフェラーリ側に近い、つまり企業ではなくレーサーのものだというのが皮肉だ。ル・マンのある局面でフォードの副社長がする提案は、だからお前はフェラーリに馬鹿にされるんだよ!と突っ込みたくなるもの。車のことをよく知ってはいるが、レースのことはわかっていないんだなと。

栄光のル・マン [Blu-ray]
スティーヴ・マックィーン
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2011-05-27