長嶋有著
作家、コラムニスト業の傍ら、俳人としても活動し「NHK俳句」選者も務めた著者が、俳句という表現はどういうものなのか、俳句会の独特な空気や不可思議なルールについて初心者にもわかるように解説していく。
実は最近、俳句にちょっと興味が湧いてきたのだが、鑑賞するのはともかく、自分でやってみようとしたときの取っ掛かりってどうすればいいのかなと思っていた。そんな折本著が出たのでさっそく手にとってみた。ユーモラスだが忌憚ない語り口で、部外者から見ると不可思議に思える俳句界のあれこれを解説しており勉強になったしとても面白かった。思っていたよりも俳句の世界は(結社にもよるのかもしれないけど)自由っぽいし、一人でもできるし他者とでもできるという所も面白いのだと教えてくれる。「NHK俳句」の添削システムについて、たまに添削前の方がいいんじゃない?と思うことはあるが、先生もまた表現者であり、(文学だから)正解はないところ「よりよい」と自分が思う所を言い放つ様こそ見どころであり先生の矜持であるという解説には納得。
軽妙な文章だが、第4章「どこまで俳句にできるか」内で言及される「今の俳句の世界に足りないもの」には著者の真剣さ、表現で飯を食うものとしてのシビアさが垣間見える。俳句界以外が主戦場な著者だからこそ指摘できることだろう。(なお、句集を出版する際の慣習についてはちょっとびっくりしましたよ…出版社の商売としてそれでいいのか…)