イギリス北部で家族経営のレスリングジムを営み、プロレス団体を運営しているナイト一家。ザック(ジャック・ロウデン)とサラヤ(フローレンス・ピュー)兄妹もレスラーとしてリングに立っており、いつかWWEの舞台に立つことを夢見ていた。ある日、WWEのトライアウトに2人は出るが、サラヤだけが候補生に選出され、フロリダへ行くことが決定する。サラヤはリングネーム「ペイジ」と名乗りトレーニングに励むが。監督・脚本はスティーブマン・マーチャント。
 実話を元にしたファミリードラマ+スポ根だが、どちらも結構あっさりしている。それが難点というのではなく、むしろ気持ちよく、ちょうどいい楽しさで見ることができた。ゲスト的なドウェイン・ジョンソンの出演も楽しい。誰かをヒールにしていない、ライバルはいても憎まれ役はいない構成もよかった。
 ペイジのWWE候補生の同期の女性たちは元モデルやチアリーダー出身の、スタイルの良い美女ばかり。プロレス一筋のペイジはむしろ異色だ。こういう場合、バービー人形のような候補生たちをついクイーンビー的な意地悪女子扱いしそうなところだが、本作はそうしない。むしろ、彼女らをレスリングの素人として下に見ていたペイジの方が偏見に囚われていた、彼女らを舐めていたことが提示される。WWEの候補生という場にいる以上、バックグラウンドがどうであれ彼女らにも相当な覚悟と努力があって当然、というわけだ。それを理解したペイジと同期生たちとがコミュニケーションをとれるようになると、全員のパフォーマンスがぐっとよくなる。プロレスの試合は信頼関係ありきだと、門外漢にもわかりやすく見せてくれるあたりがプロレス愛か。
 本作、ペイジの物語であると同時に、ザックの物語でもある。2人は表裏の関係だ。ペイジは選ばれて夢をつかんだ人だが、ザックは選ばれず夢の道から降りざるを得ない。とは言え、一つの道から降りたからといって人生が終わるわけでも、不幸が確定するわけでもない。降りたら別の道、別の立ち位置がまた現れてくる。それをつかむかどうかは本人次第だ。スターを支える人もまた、形は違えど輝いているんだよね。ジムの生徒たちへの接し方から、ザックの根の真面目さ、人としてのまっとうさがうかがえるのがとてもよかった。ああいう態度を取れるというのも一つの才能だよなと。

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アビゲイル・ブレスリン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2018-07-04