凄腕のスイーパー、「シティハンター」ことリョウ(フィリップ・ラショー)は相棒のカオリ(エロディ・フォンタン)と共に様々な依頼を請け負っていた。ある日、香りをかいだ者を虜にする惚れ薬「キューピッドの香水」の奪還を依頼される。48時間というタイムリミットのなかで2人は奔走する。原作は1980年代にアニメ化され人気を博した北条司の漫画『シティーハンター』。監督は主演も兼ねているフィリップ・ラショー。
 タイトルロゴはもちろん、サントラもアニメ版を踏襲。さらに掲示板(フランスにあの掲示板はないだろ!そもそも縦書きという概念がない!)、100tハンマーもカラスも登場するという徹底ぶり。キャラクターのビジュアル再現度もやたらと高い。ファッションも今が2019年だとは思えないもの。漫画の実写化としては異常な完成度でパリが新宿に見えてくるよ…。
 ただ、いくら原作に忠実とはいえそこまで忠実にする必要があるのか?という部分も。リョウの覗きや下着ネタは現代では(実際は当時でもだけど)完全にセクハラで笑えるものではないし、「もっこり」というワード(フランス語では何と言っているのだろうか…)も同様だ。今年日本で公開された劇場版アニメですら、このあたりのネタに対するエクスキューズは入れていたのだが、このフランス版ではそれが一切ない。また、セクシャリティや身体的特徴へのいじりは正直いただけない。今時これをやる?という感じだし欧米ではこういったいじりへの批判は日本よりも強いのではないかと思うのだが…。正直、フランス人がどういうスタンスで本作を見ているのか(ギャグはコンプラ上完全にアウトなので)よくわからないのだ。2019年に映画化するのならそれなりの、その時代に即した表現があると思うのだが(こういうギャグを排してもシティーハンターの面白さに変わりはないと思う)。ただランジェリーショーのシーンで、リョウがある事情により下着姿のモデルたちに全く反応しないというシチュエーションにしたのはひとつの配慮かなと思った。性的に見る視線がなければただの人体なんだなと妙に納得。
 とは言え本作、監督のシティーハンターが強烈だということはよくわかるし、理解の深さもうかがえる。カオリの兄である槇村とのエピソードを組み込み、その上でリョウとカオリの関係性を描いているところは原作ファンも納得だろう。そしてエンドロールではあの曲がばっちり流れる。あれがないとシティーハンター見た気にならないもんね。