中国の田舎町。高校生の少年ブー(パン・ユーチャン)は友人をかばい、不良の同級生シュアイを階段から突き飛ばし重傷を負わせてしまう。シュアイの兄はヤクザのチェン(チャン・ユー)。ブーはチェンと手下に追われて町を出ようとする。そのチェンは親友を自殺に追い込んでしまい、自責の念に駆られていた。監督はフー・ボー。
 234分の長尺だが、作中で経過している時間はたぶん1,2日。チェンの親友の自殺、シュアイの階段からの転落という2つの落下が登場人物たちの心を揺さぶり、波紋を広げていく。閉塞感が強く、動いてはみるもののどこへも行けそうにない辛さがある。彼らが漠然と目指すのは、「座り続ける象」がいるという満州里。そこへ行けば何かが変わるという保証もないのだが。
 ブーも友人の少女リン(ワン・ユーウェン)も、家族との折り合いが悪く家に居場所がない。特にリンと母親の関係は険悪(母親の言動が結構すごい。娘にそういうこというか…)で、彼女は教師との関係に居場所を求めるが、当然そちらもうまくいかない。またブーの近所に住む老人ジン(リー・ツォンシー)は娘夫婦と同居しているが、老人ホームに入ってほしいと言われる。チェンは恋人に愛想をつかされつつある。皆、居場所がないし行くべき場所もない。宙ぶらりんなのだ。何か一歩を踏み出そうとするごとに腰を折られるような展開、熱意の空回りが繰り返されるのがおかしくも悲しい。ああやっぱりどこにもいけないのかと思わせる。最後、ほのかに先を予感させるが「声」の実態は見えずまだ薄闇の中だ。
 恋人、家族、親友など、本来なら支えとなり助けとなる関係性が、ことごとく機能を果たしていない。前述のとおりブーもリンも家族と折り合いが悪く、トラブルがあっても相談できないし頼りにできない。シュアイは恋人に未練たらたらだが、関係に先が見えないことは双方わかっている。ブーと親友との関係の顛末も実に苦い。どの関係性においても、一方がこうと思い込んでいるものに対してもう一方は同調を拒み、双方向の関係にならないのだ。「お前のせいだ」という責任転嫁が何度か反復されるが、その都度はねつけられるというのはその象徴だろう。親密な関係性に対する幻想を許さないというところに時代の空気が感じられる。

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