仮釈放されたネオナチのアダム(ウルリッヒ・トムセン)は更生プログラムの為に田舎の教会で暮らすことになる。彼を迎えに来た牧師のイヴァン(マッツ・ミケルセン)はアダムに今後の目標を尋ねるが、アダムはまともに取り合う気はなく「教会の庭のリンゴの木になったリンゴでアップルケーキを作る」と適当に答える。しかしイヴァンは大真面目で、教会に住み着いている前科者のカリドとグナーを巻き込み、リンゴの木を天災から守る為のミッションを開始する。監督・脚本はアナス・トマス・イェンセン。
 ストーリーの構成要素だけ見ると感動的なヒューマンドラマにもなりうる、というかそういう要素も確かにあるのにこの奇妙さ、不穏さは何なんだ!聖書のヨブ記がモチーフの一つになっているそうだが、確かに一つの寓話、神話のような雰囲気はある。が、それにしても展開がおかしい。
 アダムはネオナチ思想に染まっているクソ野郎として登場するのだが、イヴァンを筆頭に教会に集う人たちの灰汁が強すぎて、アダムが一番常識人で共感性もある人物に見えてくるというまさかの逆転現象。特にイヴァンは「いい人」ではあるのだが、かなりクレイジーだ。本人の中で自分に起こった出来事や言動の矛盾がリセットされてしまうので周囲から見ると奇妙だし、話が通じない。この話が通じずコミュニケーション不全になっていく過程がじわじわと怖い。基本コメディなのだが、あの人にとっての世界と自分にとっての世界と、見え方とらえ方が全然違う、どこですり合わせればいいのかわからないという現象を目の当たりにする気持ちの悪さ、そら恐ろしさみたいなものがある。
 人間は基本的に主観で生きているものだと思うが、本作に登場する人たちはそれが強すぎる。自分の頭の中の世界で生きており、その世界の度合いが強固な人の地場に周囲が引きずられていくような感じだった。その当事者が宗教者というのが皮肉というかなんというか…。

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2013-10-04


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